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第3話
中心街から五分ほど歩いて、少女の家に到着した。飴色の外壁が印象的な小さな家だった。
中からふくよかな女性が現れ、覚束無い足取りの少女をそっと支える。きっと彼女の母親だろう。
「まぁ、あんたもしかして発情したの……?!」
「うん……。でもルーゴ様が助けてくださったの……」
「ども、こんにちは」
「…………えぇっ?!!」
深めに被っていたマントのフードを外し、なるべく胡散臭さを取っ払って言う。
少女の母親はおれに気づくと、目を見開き慌てふためいた。
「ルーゴ様って……なんてこと! あっ、そうだ抑制剤……っ。ちょっとお待ちくださいね」
「あぁいや、大丈夫。おれはベータだから」
「え、ベータ……あっ、すみません! とんだ御無礼を……!」
「あはは、いいんだ。それよりこの娘 が無事でよかった」
繰り返し頭を下げる母親に見送られ、少女の家を後にした。来た道を戻り、また街へと歩き始める。
「……あの娘 の母親、驚いてたな」
隣を歩くナイトがぽつりと呟いた。
「へへ、まぁな、おれはベータだからな。……そう、ベータだから……はぁ」
「自分で言って自分で傷つくなよ。そうじゃなくて、まさか王子と娘が一緒に帰ってくるとは思わないだろってこと」
「だって父さんもフーゴもアルファなのに! おれだけベータって!」
「……おれの話聞いてないだろ」
――この世には、男女の他にアルファ、ベータ、オメガという第二の性なるものが存在する。
オメガは男も女も妊娠・出産が可能で、定期的に発情期が来る性質を持っている。さっきの少女が男に襲われていたのは、彼女がオメガで発情中だったからだろう。
アルファは、オメガが発情時に出すフェロモンに酷く欲情してしまう……らしい。
この辺の話は、フェロモンに反応しない性質のベータにはよく分からない。
……そうだ。何を隠そう、おれの第二の性はベータなのだ。国王である父さんと弟のフーゴはアルファだというのに、おれだけベータだった。
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