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第5話

王宮に着くと目に入ってきたのは、忙しなく動き回る使用人達の姿だった。 「ただ今戻ったぞー」 声をかけると、老執事と侍女がこちらに気づき駆け寄ってくる。 「もう! 探しましたよお二人共、また街へ行かれたのですか?」 「うふふ、クーゴ様がお呼びですわ」 「父さんが? うわっ、なんだろう……」 「……説教かもな」 ナイトと顔を見合わせ、苦笑いを浮かべる。 父さんに呼ばれる時は大体、普段の生活の甘さを詰められる時だ。 「勉強は済んだのか」とか「あの曲は弾けるようになったのか」とか、とにかく王族としての素養を完璧なまでに求められる。 まぁ当たり前と言えば当たり前だし、説教も慣れっこなんだけど。 父さんの書斎の扉をノックして、おそるおそる顔を出してみる。書斎にしては広すぎる部屋の奥に、腕組みをする父さんの姿があった。 「失礼します………」 「……ルーゴにナイト、まーたお前達はフラフラほっつき歩いてるようだな」 「申し訳ありません、クーゴ様」 「いやいや、でもほら見てよこの美味そうな苺! 皆にあげようと思って多めに買ってきたんだ」 きっと屋台のおじさんがおまけしてくれたのだろう、差し出したバスケットには苺がこんもり盛られている。ひと粒ひと粒が大きくて艶があり、まるで深紅の宝石のようだ。 父さんはそれを受け取ると、眉間のシワを消して目を輝かせた。 「おぉ、初物か。今年は特に豊作らしいからなぁ」 「そうそう、かなり美味いらしい」 「……悪い奴だな」 呆れたように呟くナイトを右肘で小突く。 父さんは厳つい見た目と相反して、フルーツやスイーツが大好きなんだ。機嫌を取るくらいならお安い御用ってこと。 「あぁいや、こんな話をするために呼んだのではない。ルーゴ、お前は今月18になるな」 「うん、あと二週間」 「あぁ、そこでだな、立食パーティーで公爵家の面々が揃うだろう。カンヴァーユ家やセレネモード家のお嬢さん達も祝いに来る」 およそ二週間後に迫ったおれの誕生日には、成人の儀と立食パーティーが行われる。おれにとって初めての公務がこのパーティーだと言っていい。今までも会食には多く参加してきたけど、成人する前はあくまで子どもとして扱われるからだ。

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