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第10話
「皆んな今日はありがとう。再来週の成人の儀もよろしくな」
夕焼け空の下、隊員達は綺麗に列をなしている。訓練や体力トレーニングなどの視察も無事に終了し、後は王宮に戻るだけだ。
「じゃあレイウス、おれ達は戻るぞ」
「はい、ありがとうございました。アイツら喜ぶんでまたいつでも来て下さい。もちろんナイトもな」
「……はい」
レイウスに見送られながら、おれとナイトは王宮の裏門を目指し歩き始めた。
「あ〜やっぱ軍は楽しいなぁ! 定期的に見に来たいくらいだ」
「あのなぁ、遊びじゃないんだぞ。いくらこの国が平和だからって安心してちゃダメなんだ」
「んなことわかってるって。ていうかそんなことより、レイウスと何話してたんだ?」
突然に話題を変えたからか、ナイトは一瞬虚をつかれたような表情をしたけど、直ぐに「ただの世間話だ」と答えた。
*
それからあっという間に二週間が過ぎ、誕生日の四月二十日がやって来た。
早朝から侍女達が身なりを整えてくれていた。正装としてホワイトタイの燕尾服に勲章を付けているため、かなり重厚感がある。
「なぁ……なんか着せられてる感じしないか?」
「そんなことない。よく似合ってるから堂々としていろ」
「そうかあ……?」
右肩に掛けられたサッシュもまだおれには早い気がしてならない。それでも今日の主役は自分なんだから、気を引き締めて臨まなくては。
「よし、じゃあ行くか」
王宮の扉が開くと、直ぐにトランペットの音が鳴り響いた。長く伸びる階段の両脇に軍の隊員達がずらりと並び、門の奥には国民の姿もある。足元に敷かれた赤い絨毯は、門まで続いていた。
「うわぁ……」
「ほら、胸張って行け」
ナイトに背中を押され、軍楽隊の壮大な演奏に負けないよう、背筋を伸ばして一歩踏み出した。
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