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第12話

「ナイト……?」 初めて見るその表情に、ただ何となく胸がざわめいた。体調でも悪いのかと思いその頬に触れようとするも、くるりと背を向けられてしまう。 「きっとクーゴ様もお気に召すだろう。ほら、もうお開きだからお見送りの準備に入ろう」 「あ、うん……」 ざわざわと胸が騒ぐのを断ち切るように、ナイトの背中を追った。 * 翌日、父さんに呼ばれたおれは令嬢たちの印象を率直に話した。 「皆んな魅力的だったけど、特に惹かれたのはアリアかなぁ」 「ふむ、そうか。セレネモード家のお嬢さんか」 「あのさ……こんな風になんとなくで選んでいいものなの?」 「何言ってるんだ、私はニーニャに一目惚れして婚約したんだぞ」 「えっ、そうなの? まだおれの方がちゃんとしてるじゃん」 そうだった。今でこそ国王として国民に慕われている父さんだけど、王太子時代はおれよりよっぽどやんちゃしてたとか。 割と自由に生活してても軽い注意くらいで済んでいるのは、父さんなりの優しさだと思ってる。 「それと……ナイトのことなんだが」 「うん? ナイト?」 「式典も終わったことだし、二週間くらいの休みを与えようと考えている。ここ最近は準備に追われてろくに休めていなかっただろうしな」 「確かにそうだなぁ。わかったよ、おれから伝えておく」 ナイトと主従関係になってからはほぼ毎日一緒にいるので、二週間も離れるのは初めてかもしれない。 部屋へと向かう途中で彼の姿が目に入り、駆け寄った。 「おーいナイト、明日から二週間休んでいいぞ!」 「……はぁ? いきなり何言ってんだ?」 「父さんからの伝言だ。ここ最近ろくに休めてないだろって」 「クーゴ様が……そうか。いいタイミングかもな」 「え、なんで?」 「……いや、こっちの話」 そうして、二週間限定で専属従者のいない生活が始まった。 といっても、どうせ王宮で毎日顔を合わすだろう。昼間に外出したとても夜にはここへ戻ってくる。 おれはてっきりそう思っていたんだけど、どうやら違ったみたいだ。 ナイトは二週間丸々帰らないつもりなのか、三日経っても戻らなかった。 いや、そりゃ確かにナイトの休みだからどう過ごそうが彼の勝手だ。それはよくわかってるけど……。 「なんでおれがこんなに寂しくなってんだよぉ……」 ナイトのいない日々がこれ程までにつまらないなんて、まったくの想定外だ。どうにかして紛らわせたくて机に向かったり楽器を触ったりしたけど、何も手につかない。 それどころか、こんな風に寂しさを抱えているのが自分だけに思えてしまって、より一層やるせなくなった。

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