16 / 42

第15話 side.K

「確かにおれはベータだが……アルファ以外との婚約が禁じられてるのなら、断ることもできたはずだ。なぜおれを暗殺しようとした?」 ルーゴは至って冷静だった。普段はいい加減だが、こういう一面を見る度に次期国王の素質を強く感じる。 アリアは呼吸を整えてから顔を上げ、ルーゴの目を見て話し始めた。 「……私の両親はベータとオメガに強い偏見を持っていて、幼い頃から『アルファ以外と関わるな』、『この世がアルファだけで構成されたら、より良い社会になる』など言われてきました。特に父は狂気じみていて、アルファしかいない社会を本気で夢見ているほどです」 「……アルファだけの国、か」 アリアの父親、セレネモード・ゲティ。彼がアルファ至上主義である話は有名だが、まさかそこまでとは知らなかった。 「ええ。父にとってベータやオメガは排除の対象でして、次期国王であるルーゴ様が最初に狙われたのです。王宮から書簡を頂いた時、暗殺の計画を聞かされました。私は何度も反対しましたが……父や周りの人間を説得することができず…………」 そこまで話して、アリアはまた涙を流した。彼女が暗殺に加担せざるを得なかったのは気の毒だが、父親の思想に染まらなかったことは唯一の救いかもしれない。 「なんだ、そういうことか……」 「え?」 「君を赦そう、アリア。婚約は……そうだな、破棄してくれて構わない」 「え、あの……!」 ルーゴは何か振り切れた様子で言い、立ち上がった。迷いのないその背中を追いかけると、ゲティが青ざめた顔をして立っていた。 「あ、あの……これはこれは、ルーゴ殿下……」 「何を言うつもりだ? 罪の重さはお前が一番よくわかっているはずだ」 腰に携えていた剣を引き抜き彼の首筋に向けると、「ひぃっ」と情けない声を上げた。 「やめろ、ナイト! 剣をしまえ!」 「……なぜ止める?」 「おれは生きている。彼を殺すなら俺が死んでからにしてくれよ」 笑いながら縁起でもないことを言うルーゴ。おれは主の命令に渋々従い、剣をおさめた。 「……貴方のことを赦そう。おれはベータだけど、性別の不利を感じさせないくらい努力する。殺したいほどおれが憎くても、国王になるまで待ってくれないか」 「…………それは、どういう」 「アルファ以外にも活躍の場を設けるつもりだし、薬の開発は今以上に力を入れよう。きっとより良い国にしてみせる。ベータやオメガだって、虐げられるために生まれてきたんじゃないからな」 語気を強めて話すルーゴの言葉には、信念が透けて見える気がする。 その佇まいに戦いたのかゲティは素直に謝罪し、この一件はルーゴが見逃す形で水に流された。

ともだちにシェアしよう!