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第30話

「にしてもさー、カルバル家と仲良すぎだよなぁ。今年に入って何回目だ? 対話という名の茶会は……」 鏡に映る自分の姿を確認しながら、髪型を整える。今日は隣国であるコニザ王国のカルバル・ヤナ国王が来訪する日だ。 父さんと馬が合うらしく、しょっちゅうどちらかの王宮でお茶会を開いている。 「外交は大事だから仕方ない。それに、今日は第一王子もいらっしゃるから退屈しないだろ」 「え、ユノが? 本当か?!」 「あぁ、さっきクーゴ様が仰ってた」 ユノとは同い年で、昔親同士が話している傍ら二人でよく遊んだのを覚えている。ここ最近のお茶会は父さん達だけで開いていたから、ユノと会うのは三年ぶりくらいだろうか。 「そっか、ならよかった……ってあれ、ナイト、襟が乱れ――」 「っ……!」 外套の襟が捲れているのを直そうと首元に手を伸ばすも、思い切り払い除けられる。 「――っ悪い。ちょっと驚いて」 「あ、いや、おれこそごめん。急に触ったし……」 ――あれから数日が経とうとしていた。おれは努めて今まで通り接しているのに、ナイトは日に日によそよそしくなってる気がする。いや、気のせいなんかじゃない。確かに壁を感じるんだ。 もしかしておれが変なこと言ったから引いてるんじゃないかとか、従者を辞めたがってるんじゃないかとか、でもおれのことが好きならどうして……とか、とにかく色んな想いが胸を過ぎる。 考えたって仕方ないから直接訊こうと思ってるのに、答えが怖くて何も言えずにいた。 「……ほら、もうすぐ時間だ。そろそろ行こう」 「あ、おう……」 素っ気ない声に胸が苦しくなるも、振り切って彼の背中を追いかけた。 * 宮殿を出て門前で待っていると、派手な装飾が施された豪華絢爛な馬車がやって来た。馬車の周りを大勢の護衛が取り囲んでいる。 「相変わらず大層な移動だなぁ〜」 コニザ王国は宮殿も煌びやかなので、きっとヤナ国王が派手好きなんだろう。 その華やかさにたじろいでいると、以前会った時よりふっくらした国王が馬車から降りてきた。 「やぁやぁ、君はルーゴくんだね。大きくなったなぁ」 「お待ちしておりました、ヤナ国王。長旅でお疲れでしょう、どうぞ中へ」 「あぁ、ありがとう。ほらユノ、お前も早く降りなさい」 「――ルーゴ、元気にしてたか?」 「……ユノ! 久しぶりだなぁ!」 馬車から降り目の前に現れたユノの背丈は、記憶していたそれより随分と高くなっていた。ナイトも背が高いけど、ユノはそれ以上に大きい。顔つきも大人っぽくなってるし、同い年には見えないくらい著しく成長していた。 軽く見上げるような体勢でユノを見つめていると、突然ふわりと抱きしめられる。その途端、深みのある甘い香りがおれの鼻を掠めた。 「ちょっ……え?!」 驚いて思わず突き飛ばすも、何食わぬ顔でこちらを見つめるユノ。さらさらと(なび)くブロンドの髪に宝石のような(あお)色の瞳、おまけにこのスタイルの良さだ。 同じ王子でこうも違うか、と愚痴りたくなる。 「……あれ、すまない。レフィシーナではハグの文化がないんだっけ」 「ないよ……。あー、びっくりした」 「あはは、そうかそうか。それはすまなかった」 「ったく、変わってないなユノは。まぁ見た目は随分と格好良くなったけど――」 「ルーゴ、早くご案内して差し上げよう」 「あっ、うん。そうだな」 おれは突然の抱擁に少し慌てながらも、ナイトに急かされ王宮への案内を始めた。

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