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※第5話⑤
「膝まで下着を下げて、お尻を出して。」
再びglareを放ちながら、由良さんが言った。
膝まで下着を下げて、お尻を出す…?言葉は聞き取れたが、耳を疑う。
これ以上命令に逆らって幻滅されたくない。でも由良さんの目の前でパンツを下ろすだなんて、できな…
「Strip . できるよね?幹斗。」
…できる。
彼は怒っていて、そしてそれは紛れもなく幹斗が命令を守れなかったせいなのだ。
恥ずかしくて堪らず、目を閉じながら一気に下着を膝まで下ろす。
膝まで、と言うのがむしろ羞恥を大きくした。露出された部分を強調するようで。
由良さんの目の前には、俺の尻と、その間から恐怖に竦んでいる臆病な突起の一部が見えているに違いない。想像しただけで火を吹いてしまいそう…。
そしてこの体勢でお尻を出す、ここまでくれば何をされるか想像ができた。
「10回叩くから、自分でちゃんと声を出して数えてね。行くよ?」
相変わらずの冷たい声に泣きたくなる。早くまたあの穏やかな声で、たくさんたくさん褒めて欲しい。頭の中は、そんな願いだけ。
“バチン”、と派手な音ともに、晒された尻たぶに痛みが走った。
「いっ、いちっ…!!」
膝の上でお尻を丸出しにして叩かれるだなんて屈辱的な行為、子供の頃ですらされた覚えがない。
けれど、恥ずかしさよりも今は痛みが勝っている。ちゃんと数えないと数え直しになるかもしれないからと、必死で数を叫んだ。
「…っ、にっ…!!」
…
「ななっ…!!」
…あれ?
7回目になって、感覚が麻痺し始めたのかあまり痛みを感じなくなった。その代わりに今の自分の状況を意識する余裕ができ、恥ずかしさが加速する。
「はっ、はちっ!!」
そして8回目では、痛みが何か別の感覚へと変わっていくのがわかった。
…ありえない。でも、気持ちいい。この屈辱的な体勢で、しかも叩かれているというのに…?
思いがけない事態に混乱する。俺の体はいまどうなっている?
「きゅうっ…!」
あと一回。あと一回耐えれば褒めてもらえる。
そう思ってほっと気を緩めた途端、じわじわと下腹部に熱が集まりはじめた。
どうしよう、まずい。
セーフワードを叫ぼうと口を開いたのと、由良さんが最後の一回を叩き終えるのがほぼ同時だった。
「じゅうっ……!!ぁっ… 」
何も意識していなかったにもかかわらず、反射的にじゅう、と口にしていたのはいい。
しかし叩かれた反動で由良さんの膝に自分の雄が擦れ、それを引き金に身体の芯に溜められていた熱が弾けてしまった。
…つまり、叩かれて、由良さんの膝の上に吐精したのである。
頭が真っ白になった。
ただでさえ命令を守れなかったのに、お仕置き中に粗相をしてしまうなんて…。
…しかもこんなに恥ずかしい姿で。
背筋が凍りつく。
「ごめっ…、なさっ… 」
堪えようとしても涙が溢れてくる。由良さんは今どんな顔をしているのだろう。まだ怒って呆れているのだろうか。
もしかしたらパートナー契約を結んでもらえないかもしれない。
泣きながら、そういえば涙でも由良さんの膝を濡らしていることに気付いて、さらに泣いてしまう。
「羞恥プレイ、初めてなのによく耐えられたね。幹斗君。」
しかし、少しして上から降ってきた由良さんの声はとろけるように優しくて、驚いて彼を見上げると、由良さんはいつものように穏やかに、優しく笑っていた。
幹斗君、と言う呼び方に戻ったことが、プレイの終了を匂わせる。
由良さんは、怒るどころか俺の頭を撫でながら、ティッシュで吐いた精を丁寧に拭いとってくれた。
そしてちょっと待っててね、と言ってからバスルームの方へ消え、スウェットを着替えて戻ってきて。
そのままソファーに腰掛け、隣に座っていた俺を軽々と持ち上げ、膝の上に乗せ、
「よく頑張ってくれたね。」
背中から抱きしめそう言ってくれた。
「えっ、…でも俺、全然上手にできなくて…。」
「そんなことないよ。命令はちゃんと聞いてくれたし、なにより恥ずかしいのも頑張って耐えていたから、偉かった。」
プレイ中の彼との温度差に混乱してしまう。
先ほどまでの彼はまるで明けない夜のような冷たさを持っていた。
それに対して今の彼はまるで砂糖菓子。頑張った、偉い、とたくさん褒められて、堪らなく幸せな気分になる。
優しく頭を撫でられ、その温もりが心地いい。昇天してしまいそうなくらい。
「辛くはなかった?」
「…はい。」
それどころかとても気持ちよかった。
「じゃあ、次はもう少し恥ずかしいこともしようね。ご褒美は何がいい?」
もう少し恥ずかしいこと、と耳元で熱っぽくささやかれ、鼓膜が甘く震える。もし次があったとしたなら、俺はどうなってしまうのだろう。
そして…
「ご褒美…?」
ごほうびって、ご褒美…?それとも変換ミスだろうか。ともかくご褒美をもらう理由などない。
「そう。頑張ったご褒美。アフターケア。」
どう返していいか戸惑っていると、由良さんがそう付け加えた。
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