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第6話②
由良さんのベッドはセミダブルで、1つのベッドに一緒に寝てもギリギリ互いに触れずに過ごすことができる。
俺はなんとなく彼の領域を邪魔してはいけない気がして、由良さんに背を向けて眠る。そんな関係も今日で3回目。
初めての日は、疲れていたせいもあってすんなりと眠りにつくことができた。けれど、2回目からは鳩尾の辺りが甘く疼いて、たまらなくて。
谷津が言っていた恋じゃないかと言う話はやはり本当だったらしい。
けれど、もう3回目のプレイなのに、由良さんが俺に、パートナーになろうと言う話を持ち出すことはなかった。
次もしようね、と言われるけれど、パートナーになろうね、とは言われない。多分これが俺の存在に対する由良さんの答えなのだろう。
由良さんは多分ゲイじゃないし、俺には情けでプレイをしている。俺が、由良さん以外のglareに今まで反応したことがなくて、辛い思いをしてきたと話してしまったから。
そして俺は、由良さんといられるのならそれでいいと思ってしまうのだ。
今日もすごくかっこよかったな。あんなに一瞬で動けないように拘束されてしまうなんて…。先ほどまでのプレイを思い出し、さらに身体が熱くなる。
由良さんの前だと、全てが初めてだ。
被支配欲が満たされて、思いを伝えることはないけれど恋をして。
こんな関係がいつまでも続けばいいと思ってしまう。
もう寝ただろうか。少なくとも先ほどからスマホの光や不規則な寝返りを感じないから、きっと寝ているはずだ。
ちょっとだけ…
シーツを波打たせないようにそっと寝返りを打ち、由良さんの方に向き直る。そのまま静かに目を開け…
!?
「何か心配事?」
「あの、…いえ。」
絶対に寝ていると思ったのに、由良さんの目はしっかりと開いていた。藍がかった黒い瞳が甘く穏やかに細められて、俺をじっと見つめる。
「幹斗君、僕に隠し事してるでしょう。」
その瞳に見つめられると、嬉しい反面、全てを見透かされているのではないかと怖くなる。
隠してることは、由良さんが好きだということ。
もちろんそれは言えなくて、でもこの状況で何も隠していないと言い張るのも少し難しそうだ。
「実は、…その、明後日学祭で、…執事喫茶をやるんです。」
今度こそ見透かされないように、少し目を逸らして言ってみる。別に嘘じゃない。
「学祭って大学の?」
「はい。」
「それをどうして隠してたの?」
「衣装とか本格的で、由良さんが来てくれたら嬉しいなって…。」
…嘘じゃない嘘じゃない。呪文のように心の中で繰り返す。
それに学祭の前日に由良さんに一応もしよければと連絡を入れようとしていたし。
「そっか。誘ってくれて嬉しいよ。もちろん行くね。」
「ありがとうございます。…おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
本当に嬉しそうに言われ、ほっと胸を撫で下ろした。
もう一度由良さんと反対の方向を向くために寝返りを打った時に、ふと目に入った由良さんの目からglareが出ている気がしたのは、多分気のせいだろう。
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