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※第11話⑥

苦しかったけれど、それ以上に気持ちよかった。 プレイの後に残ったのは、“満たされた”と言う感覚。 このプレイを気持ちよく感じるのは、パートナーシップがしっかりと形成されている証らしいと、確か誰かが言っていた。 「…無茶をさせてごめんね。もう少し早く引き上げていればよかった。」 シャワーで身体を流した後、湯船で俺を背中側から抱きしめながら、由良さんが申し訳なさそうに言った。 「いえ、その…。」 なんて答えればいいんだろ…。 言葉を探しながら目を泳がせる。 このプレイは俺が望んでしたことで、俺はちゃんと気持ち良くて。それに、プレイ後は由良さんのことがもっと大好きになって、ますます離れたくなくなった。 俺は、ちゃんと伝えることができたのだろうか。俺がどれだけ由良さんのことを慕っているのかを。 結局言葉が見つからずに、彼の方を振り向き、紫紺の瞳をじっと覗いた。 “そうだね”、と微笑んで、由良さんが俺の手を引き、前からぎゅっと抱きしめる。 …やばい、今抱きしめられたら、ドキドキしてるのバレる…。 こんな状況でもドキドキしてしまうのは、由良さんの色気のせいだ。絶対。だって格好良すぎるんだ。 あと、そうだねって、どの言葉に対してだろう…? ぐるぐると考え、体温が急上昇していった。 「…ごめんじゃなくて、ありがとうだね。こんなに僕を信頼してくれて、ありがとう。幹斗君。」 けれどそんな言葉が続いて、幸せな気分になる。 「俺、由良さんになら命を預けたっていいって本気で思ってます。だから、その… これからもずっと、一緒にいてください。」 彼が驚いたように目を開き、そして、 「僕の台詞だよ。」 ふわりと笑んでそう言った。 …俺は、彼に少しは返すことができただろうか。ふと考える。 今日のことで、彼が案外臆病で、多分、俺が今まで思っていたよりは俺のことを必要としてくれていると分かった。 それを踏まえると、彼への見方が変わってくる。 俺が彼に対して、たとえば“ゲイじゃないんじゃないか”、だとか、“彼は俺にもったいない”、と悩んでいたように、彼も俺と付き合う過程で色々と悩んできたのではないだろうか。 …こんなこと考えるのは、自意識過剰かもしれないけれど。 でも、そうだったならなおさら、俺は彼に返したい。してもらったこと、全部。 この幸せがずっと続けばいいだなんて、もう思わない。 その代わりに、この関係が続く努力を今までよりたくさんしよう。 たくましい彼の身体にしがみついて、褒美の口づけをねだりながら、俺は心の中でそう誓ったのだった。

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