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柳は緑 花は紅 7

ガアンンッッ・・・・!! 大きな音と冷たくて硬いドアの感触に、雪は我に返ったように大人しくなった。食が細いせいで太れない雪の小さな体を、猛の筋肉質な逞(たくま)しい腕は軽々と組み伏せる。 猛は自分の肩くらいまでしかない背丈の雪を、玄関ドアに無理やり押さえ込んだ。 二人とも呼吸があがっている。 この後どうしたらいいのか、パニックになった頭で必死で考える。 猛はとにかく両想いだったことがわかったので、このまま雪を手放す気はなく、きちんと恋人同士になりたいと思っていた。 雪は自分が言ったことも猛に言われたことも全部吹き飛んでいて、キスをされたことだけが頭をグルグルしていた。 雪の細い手首を掴んで、小さい体に密着して押さえ込んで、猛は必死に言葉を紡ぐ。 「逃げるなよ・・・オレは雪が好きだ。ずっと、ずっと。でも男同士だから・・・無理やり彼女作っても上手くいかなかった。当たり前だよな。お前のことしか好きじゃないのに付き合うなんてな・・・。だから・・・ちゃんと告白しようと思って・・・今日はその覚悟で来たんだ」 「・・・ああ・・・うん・・」 「まさか雪に先に言われるとは思ってなかった・・・」 「う・・・うん・・・」 雪の気のない返事に、猛は若干イラッとした。 「雪?ちゃんと聞いてるか?」 「き・・・聞いてるよ!聞いてるけど・・・頭が追いつかない・・・」 猛が自分を好きだなんて思ってもみなかった。だって彼女いたし・・・いつも弟みたいな扱いだったし。だから、こんなことになっていることが、信じられなくて・・・。 雪は猛に押さえつけられながら、頭の中で猛の言葉がぐるぐる回って、何がなんだかわからないし、自分が何をしたらいいのかもわからなかった。 猛は腕の中で縮こまってしまっている雪を見下ろしながら、押さえ込んでいた手を片方放すと、そっと・・・雪の前髪をかきあげた。 雪が恐る恐る視線をあげると、猛が見慣れない表情で自分を見ていることに気づいた。 温かい、優しい微笑みを浮かべていた。 こんな風に・・・ボクを愛おしそうに優しく見てくれることなんてあった?・・・いや、あった。大人になってからはあまりなかったけど、実家に住んでた頃は、こうして猛がいつも見守ってくれていた。 もしかして・・・あの時から・・・そんな前からボクを好きでいてくれたの? 戸惑ったように視線を外したり、猛の顔を見たりする雪を猛は見下ろして、思わず肩を竦(すく)めて微笑(わら)った。 大きな瞳が行ったり来たりして、真っ赤な口唇が何か言いたそうに震えている。雪が考え事している時の癖。 何も変わっていない。それが愛おしくて、可愛くて、堪らなかった。 昔から何も変わらない。変わらなさすぎて不安になるくらい。 昔も今も、可愛い。 猛は右往左往している雪の顎を持ち上げて、驚いて瞳を見開いて硬直している雪の口唇に、自分のそれを重ねた。雪が全身を硬直させてガチガチになっている。 猛はそんな雪の口唇に舌を這わせて、口唇の隙間を無理に割ってその中に侵入していった。 雪は戸惑いながら、ガタガタ震えながら猛の舌を受け入れる。 猛の舌が自分の舌を搦(から)めとって、きつく強く吸われる感覚に、雪はびっくりして逃げようとする。 でも猛の体全部で押さえ込まれているので、逃げることもできず、拒絶もできず。

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