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2.ポップサーカス 【2】
「て、どのツラ下げて言えっつうんだよ─ッ!!!」
「いや、普通に言ってくれれば」
うお─ッ、と突然に頭を抱え騒ぎ出す俺へ、それはもう冷静な切り返しが批土岐から放たれる。
「う…っ、だってよお」
自然と赤くなっていく頬をどうにか隠しつつ、チラりと批土岐へ視線を向ければバッチリと当たり前だが目が合って。
そしてまた、暫しの間。
「京灯って、割と照れ屋なところがあるよね」
そう言って穏やかに微笑みを浮かべる美男子の名は、批土岐 愁。
そう、そうだ、そうなんだよ。
俺な、未だに批土岐のこと名前で呼べねえの!!!
それはもう、批土岐と初めていかがわしい事しちゃいましたあの時以来、オーイエ1度も呼んでいない現実。
とは言え、気分もかなり高ぶっていて理性も飛んでいたから、呼んでないも同然なんだけどな。
「そうなんだよ!! 流石よく分かってるぜ!! つうわけで、なっ!!」
「でも、言って欲しいな」
「…っ、批土岐は割とってえか結構…いやかなり頑固なとこがあるよな」
「そうかな?」
主張も空しく宙を舞い、相変わらずの爽やかなる微笑みに、俺は今日も負けそうだ。
そんな事言って笑って、ごまかす気なんだろコノヤロウ!!
とは言っても、しっかりと流されてしまう野郎が此処に。
「まあさ、気長に待ってみなって批土岐ちゃん」
「なんだか他人事みたいだな」
終いにはドサッ─と倒れ込み、1人バカンスモードへと突入した俺は、批土岐に手を振り開き直る始末。
「んなことねえって、何事も焦りは禁物だぜ批土岐ちゃん! 」
「…ふう、全く」
自分でもかなり無理やりな気はしたけれど、様子を窺えば仕方ないなとそれでも優しく笑んでいて、上手い具合に今回はこれで収まりそうだ。
なんだかんだで甘いな批土岐ちゃん、好きだぜそういうとこなっ!!
「負けるよ、ホント」
一拍置いて、瞳を閉じ柔らかく微笑む批土岐の姿に、また目を奪われて。
「そりゃどおも」
平然を装いつつも内心では、そんな綺麗な笑顔見せられたら心臓もバクバク鳴り出すってもんだ。
俺なんて、毎日何回何十回お前に負けてるか分かんねえっつうのに。
ああもう、参るぜこの会長様。
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