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3.ポップサーカス 【2】

「よし、終わった」 「お、完成?」 また静寂が訪れ、それから幾らかの時が経過していた頃。 ガタッと言う音と共に立ち上がった批土岐に気付き、紡がれた言葉に反応を示す。 「ああ、待たせてごめん」 「ん~ん、俺が勝手に待ってただけだからそんな謝んなってえ」 やるべきところまで終わったらしい批土岐は、俺との会話を続けながら帰り仕度を整えていく。 俺はいつだって準備万端なんで、批土岐の姿を眺めながら完了するのを待つ。 「7時か、すっかり遅くなっちゃったな」 「余裕余裕」 壁に取り付けられていた時計を一瞥してから鞄を持ち、どうやら下校する準備が出来たらしくこちらへと歩みを進めてくる。 それを見て、俺もたぶん誰よりも軽いだろうと思う鞄を持ち、ヨッと立ち上がった。 実際、慶史や響ちゃんや峰くんも確実に鞄は申し訳程度の重さにしかならないだろうけど。 いや待てよ、峰くんあたりたまに身一つで学校来てた様な…。 でも絶対、俺のほうが軽いはずだ!! て、そんなんどうでもいい? 「どうかした?」 「え? あ、いやなんでも」 知らず知らずの内にぼんやりと突っ立っていたらしく、批土岐の呼び掛けによって初めて気が付く。 鍵を持ち、すでに出入り口付近にて立っていた批土岐へ駆け寄って、電気を消し生徒会室を後にした。 「これから少し、忙しくなりそうなんだ」 「あ~、そうだよなあ。体育祭とかあるし、後なんかまあ色々」 そして行事を大して把握していない俺、自分なりに考えてはみたけれど一つ挙げるだけで精一杯だった。 昼間の賑やかさとは対をなす、しんと静まり返る廊下を歩いて行きながら、足下を確かめる様に時折視線を床へと注いで。 批土岐の言葉に耳を傾けながら、自分の中で考えを巡らせていく。 何と言っても批土岐は生徒会長様なわけで、全校生徒の代表とも言える立派な存在。 そんなだから忙しいのは当然の事だし、それで時間が作れないからと文句を言うのは筋違い。 まあ確かに俺としては、そりゃ結構寂しかったりもすっけど…批土岐も頑張ってんだから仕方ねえよなあ。

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