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4.ポップサーカス 【2】
「でも、時間は作るから」
「え? いやい─って!! ただでさえ忙しいのに無理すんなって!!」
学校に来れば会えるんだしいいじゃねえかと、我慢だ俺なんて言い聞かせていたところで、不意打ちの如く告げられた言葉に一瞬目を丸くする。
「無理じゃないよ。俺が、そうしたいから」
「…っ!! てっ…照れるんすけど」
後に続いた言葉を受けて、カ─ッと頬が熱を持ち出すのを感じ、今が本当夜で助かったと軽く息を吐き出すのだった。
しっかし俺もなに乙女チックに照れてんだか。
「何か食べて帰る?」
「お、いいね!! でも、疲れてんじゃねえ?」
「大丈夫だよ」
なんとか落ち着きを取り戻そうと1人格闘していた時に、批土岐からの嬉しい誘いを聞いて、一気に腹が減ってくる。
だけど何処かに寄ればそれだけ帰るのが遅くなり、疲れてるとこに流石にそれは悪いのではと思い直すも、隣を歩く批土岐は柔らかく言葉を紡いでくる。
「そっか。んじゃ~何処にすっかなあ!!」
心配な点はありつつも、この後もまだ暫くは一緒に過ごせると言う嬉しさにサックリと負け、俄然テンションも増し昇降口へと向かって行く。
「なに食いてえ?」
「京灯の食べたいものでいいよ」
「マジで? ん~…俺が食いてえもの俺が食いてえもの…」
薄明かりが灯されたその場へと辿り着き、靴を取り出しながらブツブツと何を食べるか考える。
そんな様子を見て、穏やかな表情を浮かべながら批土岐も自分の靴を取り出そうと、げた箱へと歩み寄って行く。
「成山先輩!!」
「へ?」
靴を履こうとしていた、まさにその時の出来事だった。
突然何処からともなく聞こえてきた自分を呼ぶ声に、余りに突然過ぎて間の抜けた言葉が唇から零れ落ちていく。
「ど─も」
「あ、どうも」
て、何言ってんだ俺!!
振り返ればそこには声の主だろう存在が立っていて、ジャージ姿から運動部らしい事が窺え、淡い光の下でも健康的に日焼けした肌や茶色がかった髪などがよく分かった。
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