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5.ポップサーカス 【2】
「え─…っと、わり!! 誰だ?」
「いっすよ。話すのは初めてだし、俺のこと知らないのも無理ないですよ」
「そ、そうか…っ」
とりあえず、無責任にも俺が相手の名前を忘れているわけではなかったらしく、その現実に安堵する。
先輩と言ってきたあたり後輩だという事はよく分かる、だけど俺なんかに一体なんの用なんだ。
俺の隣には批土岐が立っていて、唐突に現れた男の姿を黙ったまま見つめている。
「あ、佐伯 翔って言います。サッカー部っす」
「佐伯かあ…」
見たところ、悔しいかなこれでも身長175ある俺よりも高く、たぶん180近くあるのではと思う。
部活動に熱中なんて、これまた俺とは真逆の位置にいる様な奴らしい。
「で、俺になんか用か?」
「あ、はいっ!」
靴を履きながら俺に何か用事があるらしい佐伯へと言葉を掛けて、返ってきた元気のいい声になんだか笑ってしまいそうになる。
「その─…」
けれど威勢が良い割になかなか先を言おうとしない佐伯は、下を向いたりして視線を逸らしたかと思えば、何故か批土岐の方へチラりと瞳を向ける。
「ああ、俺は外すよ」
「えっ!! ちょっ、批土岐?!」
誰かが居てはしにくい話なのか、視線を向けられただけで悟ったらしい批土岐は、靴を履きアッサリと俺へ別れを告げてくる。
「先、帰るね。また明日」
「マジで!! お、お~い!!」
サッとこの場を後にしていく批土岐を、笑顔ではいたが何処かすまなそうに見送る佐伯、そしてポツンと取り残される俺。
そっそんなサックリ帰んなくてもいいのでは批土岐ちゃん…っ!!
今さっき初めて会った様な後輩と2人っきりにされてしまい、これでも結構どう場を繋いでいくか困っていたりする。
何か知らないけどあたふたしてしまって、校門で待ってるよとかなんとか言ってくれてもいいんじゃねえのとか、なかなか置き去りが寂しかったらしい。
「先輩、突然すいません」
「え? や、別にいいって!! 気にすんな」
後で奢らせちゃるぜなんて勝手な事を考え始めていた時に、佐伯の言葉によって現実へと連れ戻される。
申し訳なさそうに笑む佐伯へ言葉を掛け、瞳を合わし薄暗く静まる昇降口で1対1。
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