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7.ポップサーカス 【2】
──翌日。
どことなく落ち着かないながらも、きちんと始業前に教室に居た俺は、頬杖をつきながらぼんやりと物思いに耽っていた。
「おはよう」
珍しくチャイムが鳴る前に着席していて、早くこのソワソワした気持ちから解放されてしまいたいと、あれやこれやと想いを巡らせていた。
そんな時に聞こえてきた声、心地良い低音に視線を向ければ、側では批土岐が立っていて。
「よっ」
いつもと変わらない様子でニッと笑い答えれば、一拍間を置いて批土岐が再び唇を開いてくる。
「昨日はごめんね、先に帰って」
「え、なに言ってんだよ。批土岐が謝る事はなんもねえって!!」
謝る様な事じゃねえのに、批土岐らしいと言えばらしいのかもしれないけど。
だけどこの場合、本当に謝らなければいけないのは……
「それで、何かあった?」
「ん?」
少し躊躇いがちながらも問い掛けてきた批土岐に、視線を合わせては暫く沈黙が流れてしまって。
何かあったと言われれば、それはもう俺にとっては相当の出来事だったわけなんだけど。
つうかまず、この間はやべえだろ俺!!
なんか言えってなんか!!
「いや─…、別に、なんも…大したことねえから!!」
そして墓穴、何かはあったと言う事を素で肯定していやがる馬鹿野郎様な俺。
「…そうか。あ、先生が来たね。じゃあ、また後で」
「おう」
それでも、無理には聞こうとせず去って行ってくれた批土岐。
悪いと思いながらも、昨日あんなあやふやな返事をしてしまっていただけに、今この場でそんな情けない事をバラすわけにはいかないんだよ。
だったらその部分は隠して、上手くごまかせばいいって?
おいおい、さっきの俺のセリフちゃんと聞いてたか。
…んな器用じゃないんで。
「これ終わったらサクサク探しに行くか」
自分だけに聞こえる程度の声で呟いて、SHRを始めた風景に染まる。
とにかく、早く言ってスッキリしてしまいたかった。
別にやましいことがあるわけじゃねえけど、何かこのままじ批土岐とまともに話も出来ない様な自分が居て。
俺的に、一刻を争っていた。
「はあ…」
ああもうチクショ~っ!!!
早く終われって話なげえなオイ!!!
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