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10.ポップサーカス 【2】
「お前さ、俺なんかのドコがいいの?」
開店してまだ間もない昼前のファーストフード店。
平日なのも輪をかけて、客の数もまばらな店内はゆったりとした時間が流れていた。
そこでちゃっかりと佐伯に奢ってもらっていた俺は、オレンジジュースを飲みながら素朴な疑問を投げ掛けてみる。
「可愛い」
「うっ、ゲホゲホッ!!」
何の躊躇いもなく真顔で言ってのけた佐伯に、すんなりと喉を通っていくはずだったオレンジジュースも、そりゃあ詰まるわむせるわ咳き込むわってわけで。
自分で質問しておいてなんだが、俺もなに乙女チックな事聞いてんだかと思いはする、が気になったんだからしょうがない。
「お前なあっ…からかうなって」
やっとのことで落ち着きを取り戻した頃、苦しさに涙目になってしまった顔を向け、ポテトへと手を伸ばしつつ言葉を投げ掛ける。
「いや、ホントに」
「…おいおい」
佐伯の視力が物凄く心配になってくる、こんな野郎とっ捕まえて可愛いってお前どうしたよ。
男が男に言われるには、相当の違和感となるだろう表現を使われてしまった事にはだいぶ複雑だし、俺としてはかっけえとか男前なんて言われた方がそりゃもうどれだけ嬉しいか。
それでも何故だろう、自分に向けられている好意に対しては、そんなに悪い気がしない。
誰だって面と向かって嫌いだなんて言われるよりも、告られたり褒められたりする方が断然嬉しいに決まってる。
「っ……」
はっきりと言うつもりだったのに、こんな所まで佐伯と二人でやって来て、未だに本題へと触れられないでいる。
早く早くと思うのに、最後の最後で躓いて、喉から這い上がって来れずにいる言葉たち。
それを飛び越えて出て行くのは、全く関係がない様な何気ない一言ばかりで、それらの行方をただ見ている事しか出来ない。
なに、やってんだ俺。
これじゃあますます、批土岐に会わす顔がないって。
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