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15.ポップサーカス 【2】

「いけ──ッ!!」 夕闇が迫り来る時の中、風に運ばれ聞こえてきた活気に満ち溢れた声に、耳を傾けながら外を一人歩いて行く。 「サッカー部は、と」 陸上部や野球部やら、どの部に所属している生徒も誰もが生き生きと練習に励んでいる姿が瞳に映り込んできて、自分には到底無理なだけにすげえなと思わずにはいられない。 何かに夢中になり打ち込めると言う事は、なによりも幸せだと思う。 「お、いたいた」 部活動に集中する一人一人を眺めていきながらアスファルトの道を歩きつつ、何段かの階段を経た先に広がるグラウンドでメニューをこなすサッカー部へ視線を移し、目的の存在を探し出す。 「………」 どうやら試合中だったらしく、激しく一つのボールを追い求めていく群れの中に、真剣な眼差しで取り組む佐伯の姿があって。 遠くからそっと眺めていた俺の視界に、やがて集団から飛び出した佐伯が一直線に駆けて行く姿が入ってきて、その足には当然の様にボールの存在が見える。 誰よりも速く、誰よりも力強く、確実に狭まるゴールとの距離。 「んだよ、言うだけあって結構うめえじゃん」 いつの間にか言葉も忘れ、繰り広げられる光景に見入ってしまっていた。 鮮やかにフェイントを決めて、勢い良く止めに入ったキーパーとは逆方向へと、見事にボールが飛び込んでいく。 そして佐伯と言えば、嬉しそうに拳を握り仲間の元へと走り寄っていって。 「サッカー少年なだけあるぜ」 自信ありげに言っていただけの事はある、ちょっと感心しちゃったじゃねえかよ。 「おっ、つかなにげ時間経つもんだなオイッ」 なんとはなしに取り出して見た携帯、意外と刻まれていた時をこの目で確認し驚くも、同時に生徒会室の事が気になり出してきて。 「少しは人減ってっかな─…」 またもくるりと向きを変えると、来た道を戻り再び批土岐の元へと気持ち足早に歩き出す。 金色に輝く情景は何処か神秘的にも感じられ、1日の総てがリセットされる様な、何故かそんな気分にさせてくれる夕刻に包まれて。 「成山──ッ!! そこどけ──ッ!!」 「この声は…」 校内に残っている生徒も少なくなり始めた頃、打って変わって静まる廊下を歩いていれば、やたらデカい声が鼓膜へと滑り込んでくる。 端から端まで響き渡ったんじゃないかという程に元気な雄叫び、振り返らずともバッチリ当てるぜハズすわけがないこの問題。

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