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17.ポップサーカス 【2】
「あ、えっと…まだかかりそうか?」
「そう…だね。大丈夫? 京灯、先に帰ってても…」
考える様に少し間を空け、気遣いの言葉を紡ぐ批土岐と視線は合わせたままで、それに対して答えようと唇を開く。
「京灯っ!!」
最近、遮りが多いみてえ。
こちらへと走り向かって来る足音が聞こえてきたかと思えば、自分を呼ぶ声が耳に入り反射的に振り返っていた。
「翔? お前なにやってんだよ、部活は?」
「休憩中。てかさ、さっき見てただろ?!」
そこに立っていたのは、今ではすっかり知った顔となっていた佐伯の姿があって。
「や、見てない見てない」
「京灯目立つっつっただろ?! 思わずかっこ良く決めちゃったじゃん!! どうよ、見惚れただろ?!」
「調子に乗んな!! だあれも見惚れてなんかいねえっつの!!」
コッソリ眺めていたのがバレてたとは、思わずしっかり見ていた事を気付かれていたにもかかわらず、つい見え透いた嘘をついてごまかそうとしてしまう。
「次も出るからさ、見に来いよ!! ウットリしちゃうかもしんねえぞ~っ!!」
「馬鹿かテメエは!! そんなわけな…っ」
と、ここまで繰り広げたところでやっと、忘れてはならなかった存在の事をハッと思い出す。
「あ、批土岐それでさ…ッ」
一部始終を黙って見つめ続けていた批土岐へと視線を移し、とにかく何か言わなきゃとあたふた言葉を紡いでいく。
「先、帰ってて」
「…えっ?」
どう次へ言葉を繋げようかと一瞬の間が空いてしまった時、そっと投げ掛けられた声は穏やかだったけれど、それは容赦なく俺を突き放すもので。
「ちょ、批土岐…ッ!! 」
一方的な言葉は返答を拒み、意図の窺えない視線はスッと逸らされ、生徒会室へと戻って行ってしまった。
「…マジかよ…」
この問題は正直当てたくない、だけど解答が一つしか思い浮かばない。
やべえ、怒らせたかもしんねえ。
「京灯? 行こうぜ?」
「え? あ、ああ…っ」
暫し呆然としていた俺を現実へ呼び戻す佐伯、そしてまた応えてしまう俺はもう、本当にどうしようもない存在で。
マジ俺、なにやってんだ。
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