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19.ポップサーカス 【2】
「は~っ、すっげえサッパリした!!」
気持ち良さそうに笑う佐伯、すぐ側で眺めながら生まれる葛藤と向き合うことすら拒絶している俺。
当初の気合いは一体何処へ行ってしまったのか、未だ何も言えないままに時ばかりが無情に流れていく。
「最近なんか、元気ないよな」
「え? いやあ~…いつもと変わんねえけど?」
タオルで顔を拭いた後に、少し高い位置から注がれた視線と目が合う。
「そっかあ?」
まさか佐伯に見破られてしまうとは、俺もまだまだツメが甘いぜ。
なんて、誰かさんの口癖とも言える様な言葉が自然と脳内をよぎっていく。
「まあさ、なんかあった時はいつでも言って」
「お? 頼もしいじゃ~ん」
「まあね。あ、京灯」
「ん?……」
そしてそれを、不覚にも自然な流れのままに受け入れてしまう。
「?! おっおま…ッ!! ちょ、え?! テメなにしやがった!!」
一時の間が空いて、そっと離れていった佐伯と変わらず向かい合いながら、頭の中があれやこれやと整理に忙しない。
それもそのはず、ほんの数秒だったにしろ今、確かに感じた唇への感触は。
「いいじゃん、減るもんじゃなし」
「最初っから減るほどもねえよコラッ!!」
キスをされたと言う現実を漸く悟った時には、すでにもう1分近く刻まれるところで。
軽く触れるだけの控えめなものだったけれど、場所や状況を考えれば大胆などと言う枠に収まるものでもない。
「フライデーされてえのかお前は!! 白昼のホモとかごめんだぜ俺は!!」
「すげえ見出しだなっ」
誰に見られていてもおかしくない、なんとか平静を保とうと懸命に足掻くものの、気を抜けばふらりと崩れ落ちそうになる程度にはイッパイイッパイだった。
なんだか自分でもよく分からない事を言っている自覚はあったけれど、ここで一言も発さないわけにはいかなかった。
「マジでんなとこ誰かに見られたらお前どうす…ッ」
「見せてやればいいじゃん?」
「お前なあ~っ!!」
「あ、呼ばれてら。んじゃまた後でなっ!!」
「おおおいっ!! テメ!! 逃げんなコラッ!!」
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