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20.ポップサーカス 【2】
不敵な笑みを浮かべる佐伯は悪びれる様子もなく、変わらずの自信家な態度を崩さない。
そんな姿を見せつけられ、なんか俺って今まさに振り回されてるっつうやつじゃね?!なんてとりあえず一発かますべく詰め寄らずにはいられないわけで。
「ああ~……」
しかし悲しいかな、俺の拳は活躍の場を唐突に奪われ、佐伯はまた颯爽と風を切りながらグラウンドへと戻って行ってしまう。
「なんなんだ、なんなんだろ俺最悪じゃねえ?」
どうしようもなくなってその場に頭を抱えてしゃがみ込み、こんなんじゃますます批土岐に会わす顔がないと、ひたすらに自分を追い詰める結果を生んでしまう現実に力無く息を零す。
「…帰るか、もう今日はとりあえず帰っとくか」
なんだかもう総てにおいてヘロヘロで、考える行為自体を放棄してしまいたくなる。
そんなのはただ逃げてるだけで、これは自分が撒いた種っつうのはよく分かってるんだけど。
基本的に悩まない奴なのよ俺って、だから正直こうやってウンウンすんのは向いてないっつうか。
「はあ~、どうすっか」
自分でも、今のこの思考には驚きのほうが強い。
平気で何股もしてたりとか、可愛い子と遊びまくっていたりとか、だけどそこに愛や恋なんて言うものは一切として無かったから。
単なる暇つぶし、それだけ。
「いい加減ハッキリさせねえと!! いやでも、ああ男らしくね~っ!!」
いつからこうなったのか、けれど俺の中ではすでに答えが出ている。
俺は、批土岐がすっげえ好きなんだよ。
「……鞄持ってねえ、俺」
と、心ではカッコ良く決めたつもりでも、実際はいざ佐伯を目の前にすると言うべき言葉が喉の奥へと引っ込んでしまう。
アイツが間髪入れず喋りまくっから…!なんて言い訳を試みたところで空しいだけ。
やってやれねえ事はねえ、いつでも言えたはずだ。
渦巻いていく葛藤に苛まれながら、再び校舎内を目指し足を向ける。
「やべえっすたいちょお~」
批土岐は忙しいご身分なわけで、俺なんかの相手をしてる時間は無いに等しい。
それに加えて前の一件もあり、俺なんかからまともに接触なんて出来るわけもねえ。
んでも、一人でポツ~ンしてんのはあんま好きくねえよ。
そんな俺の元へ、いつでも来ては懐いてくれる後輩。
「はあ~、なんだ…なんなんだこの恋愛ドラマチックな展開は。つかこの場合ホモドラマ………」
丁度良く沈黙が築かれたところで、1日を終えて静まり返る廊下へ響く自分の足音を聞く。
次第に薄暗く果ては闇へと変わり行く校舎内を歩きながら、鞄を求め教室を目指し真っ直ぐ進んで行く。
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