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21.ポップサーカス 【2】
「批土岐は今日もやってんのかな」
流石に会いには行けねえ、コッソリ様子見なんて手もあるけど、そういう時に限ってバッタリ鉢合わせちゃったりするもんだ。
それはちょっと、いや会いてえのは山々だけど…ッ!!
今日はとりあえず早いとこ帰って、一人落ち着いて頭ん中を整理しなきゃなんねえと思っていたから。
兎にも角にもこの混乱した中、このまま学校に居続けたらめんどくせえ事起こしちゃいそうな気がして、いつの間にか早足になっていた足は闇に染められていく教室へと急ぐ。
「とっとと帰ろ─っ」
教室に駆け込んで、自然と視線は整然と並べられていた机へ注がれる。
そこに当然の如く存在する鞄と、窓から射し込む夕闇に映え渡る教室内。
「京灯」
「うおうっ!! ひっ批土岐…ッ!!?」
そして、そういう時に限ってのお約束がご丁寧にも用意されていた現実に、物の見事に直面する。
「久しぶりだね」
華麗なる不意打ちだっただけに、全身全霊で隙だらけだった俺はそれはもう情けないリアクションをかましていた。
鮮やかなる光を受け、うっすらと闇が降り立つ教室。
残っている奴なんて居るはずがない、しんと静寂漂うこの場に二人だけ。
「や、ホンット久々だよな~!! ここ最近ずっと忙しそうだったもんな~!!」
心地良いはずの低音の声が、今だけは俺の鼓動をバラバラに打ち鳴らして仕方がない。
「そうだね。結局時間もあまり作れなくて、ごめん」
ちく
その「ごめん」の一言が、今の俺には相当のダメージを与える。
それはホントなら、俺が言わなきゃなんねえのに。
「だいじょぶだってえ!! 批土岐が頑張ってんのは分かってっし、お前が謝る様な事なんてなんもねえって!」
「………」
「…うん?」
俺の机の側に立っていた批土岐へ向けて、笑い飛ばしつつお互いの距離を狭めていく。
けれどそこで何故か唇を閉ざしてしまった批土岐は、意図の見えない視線を向けては動けなくなる俺がいて。
「佐伯くん、だったかな」
「え?」
どうしてこのタイミングで批土岐の口から佐伯と言う名前が出てくるのか。
一気に身体が硬直していく気がした。
「付き合ってるの?」
「ハッ!? なに言ってんだよ!?」
勿論それだけで終わらないだろう事は分かっていたけれど、続いた言葉を聞いた瞬間には目を丸くし大声を張り上げていた。
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