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22.ポップサーカス 【2】
「あの日、告白されたんだ?」
「っ……」
疑問系でありながらしっかり確信しているそのお言葉は一体…っ!!
あの日、つまりは佐伯が初めて俺の前に現れた時。
リアクション一つとしてとれない俺は、何か言おうと唇を開きかけるものの声すら出てこない。
「それで、快く受けたんだ?」
「批土岐っ!! 俺は受けてなんか…ッ!!」
普段と変わらず穏やかな印象を受ける口調や態度のはずなのに。
どうしてか酷く冷めている様に聞こえ、何故か貫く様な瞳に見え、俺に最後まで言葉を放たせてはくれない。
「その割に、随分と仲良さそうに見えたけど」
「それは…ッ!! けど付き合ってっとかそんなんじゃねえし!! つうか有り得ねえだろ?! 俺にはお前が…ッ」
「じゃあ」
聞きたくないとでも言う様に、容赦なく遮られた言葉。
暫しの間を空けて、唇から紡ぎ出されていく声が漂う空気を震わせる。
「断ったのか?」
「…っ!!」
何も、言い返せない。
自信を持って批土岐に伝えられる様なこと、俺はなんもしてねえ。
断ってもいないし、ましてやその事にすら触れられずにいるっつうのに。
「…分かった」
「…なにがだよ」
一体どうすりゃいいんだと、とっくに容量オーバーとなっていた頭の中は混乱する一方で。
俺の気持ちを余所に、話はどんどん先へと進んでいってしまう。
「佐伯といるのは楽しい?」
「はあ? なんでんな事聞くんだよっ!」
端正な顔立ちに刻まれる笑み、けれどそこには今温度がない。
先に帰ってて、なんて突き放されてしまったあの時とは正直比べものにならない。
つうか目ぇ笑ってねえぞ!!
「だってそうだろ?」
そして直後には、真っ白になっているだろう俺の脳内。
「場所も省みず、キスする位だからな」
「え…」
──まさか。
「今日は生徒会が早くに終わったから教室に戻ってみれば、京灯の鞄がある。久しぶりに一緒に帰れるかな、なんて探しに歩いていたら…」
スッと視線を逸らされ、淡々と事の経緯を説明していく批土岐。
あまりにも衝撃が大き過ぎて一言一句逃さずに聞いてなんていられない。
「わりぃ…、でもあれは違…っ!!」
「何が」
「……っ!!」
「何がどう違うんだ?」
なんとかこの気まずい空気から脱しようと言葉を紡ぐものの、たった一言に遮られ弁明の余地すら与えてもらえない。
驚く程に冷めた視線、これば本当にあの批土岐かと疑ってしまいそうになる程に。
「もういいよ。無理して俺と一緒にいることないから」
「なっ! 待てよ批土岐…ッ!!」
そしてアッサリと、この場から立ち去っていく批土岐に。
死刑宣告でもされたみてえ、なんか知んねえけど頭ん中がぐらぐらする。
──見せてやればいいじゃん。
佐伯は、気付いてたのか。
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