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3.ポップサーカス 【3】
「しっかし図書室ってさ、こんなに広かったんだな?」
「まあね。京灯はあんまり来ないか、ココには」
「本眠くなんも~ん」
俺も知的になろう!なんて思い立って本を読んでみたことはあったけど、すぐに飽きた。
あんな分厚くて細かい文字の羅列、とてもじゃないけど見てられない。
「京灯らしいな。あ、そろそろ時間終わる頃か?」
「へ?あ~まあそうかも?」
それに俺が読んだところで似合わないから!
批土岐が本を読んでる姿を眺めたほうがよっぽどいいよなあ。
なんて思っていたら、批土岐が少し時間を気にする素振りを見せたから我に返った。
俺は時間なんて全く気にしないから、そんなの頭に入れてなかったんだけど。
「そうか。…戻らなきゃ、だなっ…」
「批土岐?!」
だけど批土岐は俺とは違う。
と言うか普通時間気にするよな、特殊なのは俺のほうだ。
そろそろ戻るつもりらしく一歩踏み出した批土岐だったが、ぐらりと体が傾いた。
「お前っ…だいじょぶか?」
その展開に驚いた俺だったけれど、慌てて批土岐を受け止める。
ちょっと抱き合うような形になり、顔を上げた批土岐の視線と目が合った。
「悪い…、なんか熱っぽくて」
「マジ?だいじょぶかよ~!保健室行ったほうがいいんじゃねえの?」
至近距離にいる批土岐にそう言ってみる俺とは対照的に、内部の俺は心配よりも先に…。
「…大丈夫だから」
「んなこと言ってもっ…」
潤んだ瞳に、ほんのりと紅く染まった頬、熱っぽい息遣い。
バカだよ俺、どうしようもねえな。
病人相手に欲情すんなよ!!!
どれだけ心の中で自分を怒鳴っても、目の前にいる批土岐から醸し出される色気に押し流されそうになってしまう。
何故か俺が受け手にまわってしまっているなんて知るか!
俺は今でも…コイツを抱きたいって、思ってるんだから。
「悪い、批土岐…」
「…京灯?んっ」
我ながら最低ですよ俺なんて思いつつも、こんな状態の批土岐を保健室に連れて行くなんて出来なくて。
気付くと、唇が重なり合っていた。
「ふっ…、ん」
熱っぽく漏れ出す声を聞きながら、深い口づけに舌が絡み合って、唾液がピチャピチャとやらしく音を立てた。
ていうか俺、初めて攻めっぽくない!?
俺がリードしてるっ…なんて内心ちょっと、そんな自分に酔いしれた。
かっこいいぜ!て、歓声も入れた。
「京灯っ…、こんな所でっ…」
「良くね?どうせ人なんて来ねえだろうし、たまにはさ…」
壁際にまで下がった批土岐に覆い被さるように壁に手をつく俺。
艶やかに光る唇がまたそそって、俺の欲は駆り立てられた。
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