「おはよう、京灯」 ビクッ―――!!!!! 忍者俺、ここで敗れたり。 批土岐に会わないように会わないようにと念じながら物凄いコソコソ廊下を歩いていたっていうのに、ちょっとお前それって酷くねえ? もっとさ、俺にも作戦成功した後のあの喜びに浸る瞬間っていうやつをさー少しは味あわせてくれても良くねえ? なあんつって、思っているようなお暇な時間はもちろん俺には用意されているわけもなく。 「よ、よおっ…」 いつの間にか背後に立っていた批土岐のほうへと、苦笑いしながらも振り返る。 やべえ!!見つかった…!!! やっぱいっそのこと休んどけば良かった!!! でもそしたら批土岐の顔見れねえし!!1日1批土岐はないと! いやいやいや!!でもっ、でもなッ…! 「おめでとう」 「はッ…はは」 ギャーギャーと混乱する俺の脳内を余所に、目の前の生徒会長様の爽やかさといったら。 極上の笑顔を振りかざしながら、ジワジワとした暑さなんか微塵も感じさせないこの涼やかさ。 おう!つうか、うん。 俺は寒くなってきたぞー 「遅刻、だね」 「・・・・・」 柔らかい笑みを浮かべられているのに、どうして俺の背筋に悪寒が走るんだろう。 学校に来て、まず一番初めに批土岐の顔を見れたっていうのに、どうして俺ってば口端ヒクつかせながら笑っていることしか出来ないんだろう。 「分かってるよね、約束」 ニッコリ 「い、いやあっ…そのーなんていうかーねえ?」 「それじゃ、行こうか」 「ちょっ、批土岐!?言い訳とか聞いてくれない系ッ??!」 力強く腕をぐいぐい引っ張られながら、後をついていくしかない俺。 問答無用らしい。 そっ、そんなー批土岐ちゃーん! 休まないだけでも褒めてくれよーっ!