51 / 155
3.ポップサーカス 【4】
「ッ…」
だけどとりあえず言われるがままに、舌先をチラリと出してみる俺。
口は半開きな状態で、自分的にかなり情けないような顔で目の前に居る批土岐のことを見上げた。
「もっと出して?」
机に座っている俺に、批土岐が手を差し伸べてくる。
最初は頬の上を軽く滑らせながら、やがて髪に触れながら後頭部のほうへ。
その行動によって、自然と近付いてくる批土岐の顔。
少し角度を変えていきながら、狭まるお互いの距離。
「んッ…」
口ぴタンにでもしてまさか食う気か!?なんてことが一瞬だけ頭上を掠めつつも、どうしてもその眼差しに抗えない俺は更に舌を出してみる。
「はっ…」
そしたら近付いてきた批土岐の唇からも舌がチラッと出てきて、それはまんまと俺の舌先に絡み付く。
「ふ…、ん」
なんか舌先が絡み合うとか、すっげえやらしい感じがする。
静けさ漂う室内には、お互いから発せられる熱のこもった息遣いと微かに粘着質な水音。
「ソレ、刺さると痛いからね」
「ッ…、あー…」
少しの間お互いの舌が絡み合った後、ゆっくりと離れていった批土岐に内心少し名残惜しさを感じる。
いやダメじゃん、俺。
こんな所でそんないけないこと!!とか思っていたはずなのに、あっという間に批土岐の虜だよ。
ニッコリと笑いながら、そっと口元に収まる鋲型のピアスに触れてくる。
「前の時間、なんだったか分かる?」
「わかんね」
チクショウなんか恥ずかしいよなあ、なんて思いながら批土岐から目を逸らしながらボソりと答える。
髪を撫でてくる掌の感触が心地良い。
「実験、ココでね」
「マジ?そうだっけ」
そんな時聞かされた批土岐の言葉に、俺は初めてこの場所で実験の授業があったことを知った。
マジかよー、そんな楽しそうなことがあったなんて!
俺のバカ!寝坊なんてお約束じゃん!
しかも…それで遅刻したことにより…
「そう。見事に3日連続で、遅刻してくれたね」
「やっ、その!これには深いワケがッ…!」
笑顔が猛烈に痛い。
「俺は先にちゃんと、忠告したからね」
「ひっ…批土岐ー…ちょっ、手がさ…なんか…」
俺のベルトに。
「問答無用。成山くんがもう遅刻しないように、これから生徒会長の権限を持って…」
「なッ、なんすかッ…」
「お仕置き、させてもらうよ」
「えっ!!マジ…つうか、何を…」
「京灯専用、楽しいことだよ」
「・・・」
それって…
お前が楽しいだけじゃあ…
ともだちにシェアしよう!