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2.ポップサーカス 【5】

「制服は、その中に入れておいて」 「あいあいさーっ」 そんな俺をよそに、批土岐と言えば相変わらずの物腰の柔らかさで綺麗な笑顔を見せる。 指先に指し示された籠、その中に着ていた制服を脱いでそっと入れる。 「アレ?つうか批土岐は?入んねえの?」 「いや、京灯の後に入るよ」 指輪やらブレスやらせっせと取っていた時、そういえばと思って批土岐に視線を向ける。 濡れた漆黒の髪からポタポタと滴る水滴、いいい色っぽいなオイ!! だけど当の本人は、制服ビショ濡れで気持ち悪いだろうと思うのに脱ごうともしない。 「え、なんで?入ればいいじゃん!」 疑問に思って聞いてみたら、わざわざ俺の後に入るよなんて言いやがるし。 別に一緒に入ればいいじゃん!なあ? 俺は最初っからそのつもりだったぜー。俺だけが先に入るとか悪いし!このビッショビショの気持ち悪さを体験しているだけに、批土岐をその状態のまま待たせるなんてことは俺には出来ねえっすよ! 「………………」 「んだよ、その間は」 そう思って、口ピを外しながら批土岐に問い掛けてみたところ…… 何故か、俺を見つめながら長いこと黙る批土岐。 や、なんで何も言わないんだよ批土岐。俺なんかオカシイこと言ったか。 「そうか、分かった。じゃあ俺も、入るから」 「おう!おっけー」 頭を悩ませながら鋲ピアスを無くさないよう注意しつつ籠に入れていたら、やっと批土岐が口を開いた。 一体なにを考えてそこまで間が開くんだよ、とは思ったけど入る気になったらしい批土岐が制服を脱ぎ出して、俺はニコッと笑いかける。 「京灯」 「ん?」 口ピどっちも取ったよな、なんて思いながら口元に触れていたら、批土岐に呼ばれた。 「先に言っとく。ごめんね」 「はあ?」 批土岐から出た思わぬ言葉に、唇からはどこか間抜けな声が俺から漏れる。 ごめんってなんすか!意味わかんねぇ!! 頭上に幾つもはてなマークを散りばめていた俺に、批土岐はただフッと柔らかく微笑むだけで。 「気にしないで。さ、入ろう」 「あぁ~?……わあかった」 なあんか気になるよなあ。 と、思いつつも俺には分かるはずもなく。 まあいっか、と自分の中で完結させると風呂場へと足を進めたわけで。

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