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8.ポップサーカス 【5】
「うん。どうしてほしい?」
「あッ……さ、わって」
スッと背中に腕をまわされながら、静かに喋りかけてくる批土岐。
言わなくても分かってるはずだろ!!つうかここまでさせて言わせといてッ……なんか、今日の批土岐ってば鬼なんすけど。
「触って欲しいの?どこを」
「そ、れはっ……」
もういいだろう!十分だ俺!!と、自分の頑張りに拍手じゃ足らない位の歓声の嵐だっていうのに、まだ批土岐はなんの動きも仕掛けてこない。
「ん?」
「ッ…!」
肩に優しく触れ、そっと体を押してくる。
こんな時に、批土岐と目を合わすはめになり、視線を泳がせながら為す術もなくて体を固まらせる。
マジ俺もう限界なのにっ……!
「んだよッ……しゅ、うのアホッ…」
名前を呼んでいたことにも気付かない位、切羽詰まっている俺自身。
これ以上、俺にどうしろって言うんだよ。
首を少し傾げ、穏やかな瞳で見つめてくる批土岐に、情けない声が出てしまう。
「んッ…!」
そうしている間にも浴槽に張られたお湯はどんどん溜まっていき、水位を見る間に上げていく。
心地良い水音がこの場を盛り立て、湯気で辺りが暖かく包まれる。
鏡は曇り、そこから水滴が伝い落ちて、そんな中で批土岐と顔を合わせている俺。
正確には、かなり目ぇ逸らしまくっちゃってるんですが。
この俺がここまでしてやってんのに!!だけどまだ批土岐には、なにかが足りないらしい。
んなこと知るかよクソ~っ!!!
「ココ?こうして欲しいの?」
「はッ、あっ…!」
これ以上にない位の羞恥を味わいながら、こんなにヤッてる時に恥ずかしさを感じたのは初めてだよと半ばヤケ気味にそう思う。
唇を微かに震わせながら、後一押しすればこの張り詰めているものが楽になれるはずなのは分かっているんだけど。
お願~い触って~イキたいの~
…………なんてこと、俺が言えっとでも思ってんのか会長。
じわじわと一番イイトコには触れず、遠回しな愛撫ばかりを俺自身に与えてくる批土岐。
それでも気持ち良いのは確かだけど、だけどそんなんじゃダメなんだって!
俺だってなあッ……
んな焦らしまくられたら怒っぞ!!!
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