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16.ポップサーカス 【5】

手の甲まで湯に沈め、軽く混ぜるかのように指先を泳がせながら湯加減を見ていた批土岐。 入るには適温だと感じた批土岐からの誘いに、長いの間の後にボソりと呟いていた。 「そう?じゃあ、俺は先に」 「ひときッ…!」 視線を逸らし、とてもじゃないけど批土岐と目を合わせるなんて出来ない俺。 だけど見てりゃ俺が今どんな状態でどんな気持ちの中その三文字をやっとの思いで言葉にしたか位分かんだろッ?! 「京灯?」 なのにコイツときたらッ…! 俺を放って湯船に浸かろうとしやがった。 立ち上がろうと膝を浮かす批土岐、考えてる余裕もなくて、ただ言葉なんかよりも先に目の前の腕を掴んでいた。 「こッ…れ以上、どうしろっつうんだよっ……俺、すっげ恥ずかしいのにっ……」 不思議そうに問い掛けてきた声に、とうとう俺は……… 本格的に壊れた。 「…ほ、しいッ…てこと位…っかってるくせにっ…」 「……」 腕を掴む手に力を込めながら、言葉を口にする。 「もうッ…も、これ以上は…っ無理!ネコでいいッ…いい、からっ…!」 「ずっと受け入れる側で、いいの?」 この俺が受ける側なんて!てことは常々思っていた。 俺みたいなのはかっちょよく攻める側なんじゃねえの?!てさ。 こんな綺麗な会長を攻めずしてどうする!!て、結局は流されてしまいながらも全く懲りずに次回に向けてまた気合いを入れていた。 でももうッ…、こんなにされて今更、俺にどうこう出来るなんて思えないッ…! ソコだって……もう、お前を受け入れんのがッ…たりまえになっちゃってんだよっ…!

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