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6.ポップサーカス 【7】
「おい、お前」
「なにか用」
野放しにされて調子に乗っている那月、俺でも存在位はちゃんと知っていた。
たまにバッタリ廊下なんかで出くわして、奴という金持ちとそれに授かろうとする取り巻きから挑発された覚えがある。
付き合うだけ無駄、面倒な上に俺の中じゃどうだっていい奴らに裂いてやる時間はねえから、ちょっかい出されたら適当に流す。それ位のもんだった。
「くだんねえこと考えてんじゃねえよ」
けど今は、状況が違う。
「へえ?成山くんが批土岐くんの味方するなんてねえ」
「あァ?ハッキリ言えよ、なに言いてえか分かんねえんだよ」
俺が批土岐絡みで黙ってられるわけねえじゃん。
庇うように批土岐の前へと躍り出て、頭何個分か小さい対象に向けて思い切り睨みをきかせる。
ふざけやがって、テメエみてえなのに言いように振り回されてたまるかっつうんだよ。
「なにで釣ったの?この害虫」
「んだとテメエッッ!!!!」
見下ろす俺に、那月は怯むことなく寧ろ愉快そうに笑ってみせる。
瞬間、言われた言葉にカッと頭に血が昇った。
「ガン飛ばせば怯えると思ったら大間違いなんだよ、バーカ。クズは消えろよ」
息を呑むギャラリーに包まれ、勢いのままに那月の胸ぐらに掴みかかっていた。
「生徒の代表であって、見本でなきゃならない会長が?こんな人生捨てちゃってるような不良と仲良しだなんて、おかしな話だよね」
「黙れよテメエッ、その顔潰してやろうか」
「京灯…いいから」
嘲った態度に殴りたい衝動に駆られるも、すんでのところで自分にブレーキをかけて踏みとどまる。
でも無理だ、そんな長くもたねえ、込み上げる怒りが引き金へと徐々に近付いていく。
すぐ側で囁かれた批土岐からの制止の言葉、頭ではちゃんと理解出来てる。
でも…っ、でもコイツ許せねえじゃんかよ…ッ!!
「こんな不良と群れてる会長なんかには、ますます生徒の代表として居てもらいたくなんかないよねえ?」
「君にそんなことを言われる筋合いはないな」
今にも殴りかかりそうになっていた俺をすっと柔らかく制して、今度は批土岐が前へと出て行く。
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