99 / 155

8.ポップサーカス 【7】

「へえ!そんなことがあったなんてな~」 「バーカ。なんで殴んねえんだよ」 思い思いに口にする言葉を聞きながら、階段にて間に挟まれうなだれていた。 「ははっ!那月もやるなあ~まさか会長にケンカ売るなんてな!」 「いて。痛ぇって叩くなよ~」 なにをどうしたらいいのかと思い悩む俺の心中は察してもらえず、隣に座る慶史はそりゃもう見事な暢気っぷりでしまいにゃ背中まで叩かれる始末。 なんてお気楽ものなのかしらこの子は……!! 「で、どうすんだよ」 「え?う~ん………わかんねえ…」 なんて思えば、今度は冷静な言葉が俺に投げ掛けられて。 つうかゴメンね、お二人さんの間に割って入って居座っちゃって。今更ながらちょっと後悔。でもあからさまに場所変えようとかしようもんなら響ちゃんがキレるからなにもしない。照れキレるから俺はじっとしてるぜ。 「まあでも、那月のあの性格の悪さは皆知ってることじゃん?選挙になったとこで、勝負にならねえよなあなんて思ってんだけど…」 「甘いな」 ぼんやりと前を見つめながら、正直なとこを言葉に表してみる。 だってさ、奴の最悪さは誰もが分かってることじゃん? そんな奴に票入れる奴がいるか?誰がどっちに投票するかなんて分かんねえわけだし。 それに、会長である批土岐に不満を持つような奴は一人もいないだろうし。 勝負は始めからついてるはずだ。 「ああいう奴が、自分が不利だと分かりながら堂々とケンカふっかけてくると思うか?」 「う…ッ、確かに…」 だけどそんな理想は容赦なく響ちゃんによってブッ壊され、続いた言葉にああなるほどなと思わずにはいられない。 アイツは批土岐に勝つ自信がある。 最初から負けるなんて選択肢は奴には毛頭もない。 だからこそあの大衆の前でも堂々とあんな態度がとれたし、誰もなにも出来るはずがねえととっくに分かっているから。 「しっかしアレだな。アイツの言葉はなんでも通っちまうんだな」 「そりゃそうだろ。アイツの機嫌を損ねたら大変なわけだから、学校側も出来る限り応えんだろ。バカみてえな話だ」 俺を挟んでの会話を両耳に受けながら、有り得てはならないこの二度目の生徒会長選挙に、校内全部が揺れ動いていた。 万全の準備が整わないようにするためなのか、当日はもうすでに明後日へと差し迫っている。 急過ぎる展開、あんな奴が当選するとは思えねえけど、とにかく那月なんかを会長にしちまったらいよいよココも終わりが見えてくる。 「でもさ、こんな時間もねえのに…どうやって票稼ぐ気なんだろ」 「はあ」 「なにその溜息!!」 それだけは絶対あってはならない。 つうか、会長っつったらさ…やっぱ批土岐しかいねえじゃん?

ともだちにシェアしよう!