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9.ポップサーカス 【7】

兎にも角にも時間がない、そんな現状で不利なはずの那月がどうやって生徒大半から票を得るつもりなのか。 素朴な疑問に、真横から盛大に吐き出された溜息に軽くショックを受ける俺。 「よーく考えてみ?お前が批土岐を勝たせたいって思うのと同じ」 「那月にも、そういう奴らがいるってことだ」 言われて初めて「ああ!」と納得、那月の側にいつも居る奴らを思い出した。 金で繋がれているのか、ホントのところなんて俺には分かるはずもねえけど那月に取り巻いている奴らがいるのは確かなことで。 「な~るほどな」 この場合、那月の行動一つよりも注意しなきゃなんねえのは寧ろ奴らのほうなんだと気付かされた。 絶対に汚ねえことして票搾り取る気だ、こりゃあ俺の出番ってやつじゃないっすか? 「ありがとな!お陰様で俺様の任務が見つかりましたァ!!」 バッ!!と勢い良く立ち上がったかと思えば、そこから下へと大ジャンプ。 驚く二人に、着地して振り向いた俺はニッコリと笑いかけてみせて。 「おい!お前一人でどうすっ…!」 「あーあーあー!だいじょぶだいじょぶ!!後は俺がやっから!!なんで!!お二人は仲良くラブッてろよvじゃなー!!!」 「な!!テメエェ!!!」 一気に言うだけ言ってその場を走って後にした俺に向けて怒声が張り上げられたのは言うまでもなく。 助言聞くだけ聞いて一人で行動起こそうとしててワリィ。 でもさ、面倒ごとに巻き込みたくないっていうか。 散々昔、特に響ちゃんなんて好き勝手な俺に付き合わせちゃったから。 側に居てくれるだけで十分なんだよ、二人とも。 「さってと~、取り巻きは何処にいんのかな?」 なにも出来ねえ無力な自分は嫌だ。 好きな奴位、やっぱ自分の手で守ってあげてえじゃん? 一体生徒会の奴らでどんな話し合いがされたかなんて俺には分かるはずもないけど、黙って決着つくのを見守ってるなんて出来ねえからッ… 「どうしてっかな…アイツ…」 目指す場所もなく廊下を疾走する俺の頭の中に浮かび上がってくる批土岐の姿。 どうせ、全部自分一人でしょいこんじゃってんじゃねえの? かっけえ生徒会長様もいいけど。 俺にはさ、──かっこわりいとこもたまには見せてみろよ。 「やっぱまずは…」 この時間の授業が終わったら、批土岐の様子を見に行ってみようと思った。 や、つうかサボったのバレバレなわけだから色んな意味でかなり危ねえんだけど。俺が、俺がだ。 まあいつも通りならそれはそれで、いいんだけどな。でもそうなると体がもたねえのな。て、なに言わせんだっ!

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