101 / 155

10.ポップサーカス 【7】

「批土岐っ!」 「?京灯ッ…」 休み時間へと入ったところで教室へと戻り、教科書を机の中にしまっていた批土岐の元へと真っ直ぐに向かって行った。 「わり!サボっちった」 真ん前で両手をパンッ!と合わせていつものように笑ってごまかす俺に、批土岐は教科書をしまい終えてから視線を向けてくる。 「全く。仕方ないな」 フッ、と穏やかな笑みを浮かべながら席から立ち上がる。 うお!やべえ!や、やるかあコノヤロー!なんてどっかに連れ込まれるんじゃないだろうかと危機感もちょっと抱きながら、次なる行動を待ってみる。 「え?おい、何処行くんだ?」 「ああ。生徒会」 「マジで?」 だけど身構える俺が予想していたような展開にはならず、何処かへと向かい教室から出ようと歩き出した批土岐に慌てて駆け寄る。 「日が迫ってるからね。出来る限りのことは、やっておかないと」 「…批土岐」 ガッチリ勝負を受ける気でいるらしい批土岐。 理不尽な戦いだけど、お前なら間違いなく勝てるって。 「…だな。おう!頑張ってこいよー!」 ハハッと軽い調子で笑いながら批土岐の肩をポンポンと叩いて、でも同時になんか複雑な気持ちにもなってきて。 「朝は、ごめん」 「へ?朝?」 「那月が、色々酷いこと言っただろ?」 「ああーアレな。全然気にしてねえし!つうか批土岐が謝ることじゃねえし!」 廊下を進む批土岐に申し訳なさそうに今朝のことを謝られて、お前がそんな事言う必要なんてなにもねえのに。 人目もはばからず抱き締めてやりたくなった衝動を必死に抑え込みながら、暢気な声で笑ってみせた。 「あ!会長会長~!」 と、そこへまた俺にとってはタイミング悪く現れたきっと生徒会の子だろう女の子。 慌てた様子でパタパタと俺らのもとへと走って来る。 「はあっ、はっ…応援演説…誰にするか…決めましょぉ…っ」 着く頃には息も切れ切れで、運動はあんまり得意じゃないらしい。 「うん、分かった。ごめんね、走らせて」 「い、いえ!!」 見よ、あの極上の笑みを。ちょっとジェラシ~。 「頑張ってな!かわいこちゃん、批土岐を宜しくね!」 「え?!あ、はい!」 忙しい身である批土岐、突然話し掛けてみたら女の子は思いもよらなかったらしく焦らせちゃったけど、二人が歩き出すのを見守りながら俺は内心気合いを入れる。 誰にも知られなくていい、全力で取り巻きどもと戦っていく所存でございます!!

ともだちにシェアしよう!