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17.ポップサーカス 【7】
「あれ~?成山くんじゃ~ん?」
「なに?俺らになんか用?」
目の前に立っているのが俺だと認識した途端、驚いていた表情が見る間にニヤついたものへと変化していく。
すでに見下されてるってやつですか。
「ははっ、馴れ馴れしく呼ぶなよ」
そんなレベルの低い挑発には乗らねえ。三人ともが俺へと意識を向けたのを確認し、隙をついて餌食にされていた子に視線を送って。
「ッ…」
様子を窺いつつなんとかこの場から遠ざかって行けたことに内心安堵しながら、ここからどうすっかなと思考を働かせる。
軽く笑い飛ばしながらまともな反応を奴らには返さない。
知ってんだぜ?
俺だって、元はお前らみてえなのと変わんねえんだからよ。
「いやあ~アレっすね─!やっぱ~那月さんに取り巻いてるだけあって、やってることも誰もマネ出来ないってゆーかあ~頭よえーってゆーかあ~」
「なんだとっ!!!」
こういうヘラヘラした感じとか、すっげえ癪にさわんだろ?
頭に血が昇り、正常な思考が姿を隠してきた中で俺はニッと口笑う。
「あ!クソッ!逃げやがったアイツ!」
「お前らとなんか一緒に居たくねえだろ」
ここで漸く、さっきまで捕まえていた生徒がいなくなっていたことに気付いて床をダンッ!!と踏みつける。
ますます、俺への怒りが込み上げてきたらしい。
「取り巻いてんのはお前のほうなんじゃねえのー?」
その内の一人が、俺に真っ直ぐ敵意を浴びせかけながら口を開いてくる。
「は?」
一人が相手じゃねえと面倒なもんだよな、なんて思いながらも余裕のある態度でソイツへと視線を向けて。
「あの頃の成山くんはどこ行っちゃったんすかあ?今じゃ会長に取り巻いていい子ちゃん気取りかよ?ハッ、惨めだっ…」
ゴッッ
喋り出したことによって冷静さを取り戻してきたらしい残りの奴らも、またニヤニヤとムカつく笑いを浮かべながらじっとこっちに視線を送ってくる。
黙ったまま、笑顔のままでソイツの言いたいことを最後まで聞いてやろうと直立不動で耳を澄ませていた。
「あ~あ~っ、いってえな。壁殴っちゃったじゃん」
「…ッ!」
調子こいて笑うその顔面真横を掠って、壁を全力で殴りつける。
ビリリとした衝撃が全身に波のように広がっていき、その瞬間だけは完全に失われた痛覚。
「で、なんだって?」
カシャッッ
「!?」
口ピぶっ刺してやろうか位の勢いで迫りながら、声のトーンを緩やかに落としていく。
そんな時だった。
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