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19.ポップサーカス 【7】

「はは!熱くなっちゃってバカみてー!」 「るせえ!!!」 バタバタと荒々しく踏みつけながら、廊下を疾走していく二つの影。 あんなネタを持たせたまま、あの野郎を放置しておくわけにはいかねえ!! 自分一人だったら別にどうとでもするし耐えられるけど、今回はワケが違う。 行動一つ一つが、アイツを追い詰める要素になりかねない。迷惑かけたくて、俺はこんなことしてんじゃねえんだ。 【不安要素】 「ッ…!!」 また執拗に脳内に浮かび上がってくる言葉。 それを必死に外へと追いやりながら、前方を走る背中を睨みつけては少しずつその距離を縮めていく。 本気出したら結構速ぇんだよ俺は!! 「…?!」 余裕の笑みを浮かべながら振り向き様子を見てきた奴が、サッと一瞬で表情を硬くしたのが見えた。 それもそうだ。かなりの勢いで開いていたお互いの距離が、数分後には目と鼻の先にまで迫って来ていたんだからな。 正直、そんな自分に俺も内心で驚きつつ。つうか、お前の足がギネス並に遅ぇだけなんじゃねえのー? 「そろそろ諦めちゃったほうがいんじゃねーの?!」 風を切って走り抜けていくことによって、次第に取り戻しつつある冷静な思考。 人も居なくガランとしている教室を横目に廊下を走り続けながら、目指すは唯一つ奴のデータフォルダ。 俺のファンならファンって素直に言ってくれれば一枚でも二枚でも俺アルバム作りを手伝ってやんのによー!! マナーがなってない奴にはお仕置きが必要だぜ!! 「?!…くそ!」 計算通り、焦りの出てきた奴にまともな判断を下せるわけがない。 じりじりと確実に距離を狭めていきながら、逃げ惑う奴の運命は今まさに俺の掌が握っている感じで。 がむしゃらに、ただとにかく俺に追いつかれないように走り続けたソイツは、自分が逃げ場のない所をいつの間にか目指し始めていたことにも気付かない。 長い廊下を全力で駆け抜けて、道なりに右へ曲がって階段を上がってまた廊下に出て、そしてその先にはもう。 「行き止まり」 「ッ?!うあッ!」 開け放たれたままだった最後の教室への出入り口の前を奴が横切るところを狙って、一気に加速して背後から襟首を掴み寄せる。 続いて力を入れたままに、その身体を上手い具合に教室の中へと押し込んで。 情けない悲鳴と共に、バランスを失い脆くも崩れ落ちた先から滑り落ちる携帯電話。 「あッ…!」 夕闇が迫っている。朝日とはまた違う印象を持たせる光、鮮やかに室内を照らしていく中で。 携帯が自分から離れてしまったことに、転んで数秒経ってから気付いたソイツが腹這いになって腕を伸ばして掴み取ろうとする。

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