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20.ポップサーカス 【7】

「おっと」 限界まで腕を伸ばし、後数mmのところで無情にも目の前で踏みつけられる携帯。 「借りるぜ」 「な!触んな!」 少し前屈みになって腕を伸ばし、ヒョイッと拾い上げた携帯を躊躇いもなく開いて画面を見る。 その俺の行動に、焦り立ち上がろうとしてくる姿を視界の端に捉えて。 「消す以外なんもしねーよ」 ピッピッピッ、と電子音をさせながら視線は画面と注がれつつも素早く身を動かして奴の背中へとドカりと乗っかる。 「ぐッ…!」 下で潰されてる奴からしてみれば、相当屈辱的な醜態。 お前がわりーんじゃん?ふざけたマネしやがるから。 「おー、コレコレ!」 使い慣れない機種を操作しながら、さっき撮られた画像を探す。 まあ俺が使ってる携帯と違うモノにしたって、そう大して変わらねえじゃん? だからまあ、苦労も特になく綺麗にサッパリとさっきの画像を消去することが出来た。 でもさ、幾らその画像にしか興味がないにしたって、つい見えちゃったら気になるのが自然の摂理じゃん? 「へえ─…結構可愛いく撮れてんじゃん?」 「…ッ!!」 含むその物言い、思い当たるふしを脳内に浮かべて身を固まらせる。 スクロールさせてもさせても、出てくる画像は殆どが同じ人物の映り込んでいるもので。 「黙ってりゃ可愛いのに、なんつう言葉はコイツの為にあるようなもんだよな」 だんまりを決め込む奴の背中に未だ座り込みながら、一つ一つの画像を流し見していく。 猫被ってるだけだろうけどその笑顔もきっと堪らなく思えるんだろう。 ひでえこと言われたとしても、それすら愛しさに変わっていくんだろう。 「…こんなんでいいのかよお前」 金だけで繋がれているくだらねえ関係だけじゃなく、こんな大事な気持ちで溢れている奴も那月の側には居たんだっていう事実に驚いて。 でも、甘やかして思い通りにさせるだけが優しさじゃねえ。 「俺は……ッ」 か細く呟かれる言葉、さっきまでの気の強さがまるで嘘のように。 「成山くんッ…!」 「?!」 もしかしてコイツなら、話が分かるかもしれない。 そう思いながら、一言ずつじっくり考えていきながら唇を開こうとした。 「あ……お前…ッ」 けれどそんな俺の行動は見事に遮られ、新たな発言者の登場に俺はさっき入ってきた方向へと瞬時に視線を向ける。

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