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22.ポップサーカス 【7】

「でも、これじゃなにも変わりません」 「あァ?!!」 なのに、そんな俺の気持ちやなんかは全く無視されて言いたい放題なその言葉たちに神経が逆撫でされていく。 なんでお前なんかにグダグダグダグダ言われなきゃなんねえんだよッ……!!! 「その無神経な行動が、会長をどんどん不利な状況に立たせてしまうことに気付いて下さい」 「なんでそこまで言われなきゃなんねえんだよ!!じゃあなにか?!卑怯な手え使って票稼ごうとする奴らを!お前はほっとけっつうのかよ!!?」 怒気を露わにして声を荒げる俺に、廣瀬はもう顔色を変えない。謝りもしない。 「放っておくつもりはありません。こちらでなんとかします」 「信用出来ねえな!後先気にしてなにも出来てねえじゃねえか!!綺麗事でまとめやがって…!テメェらマジでアイツのこと勝たせてえのか!!?」 口だけなんじゃねえのか、そう思わずにはいられない俺の気持ちだって分かるだろ。 「当たり前じゃないですか…ッ、勝たせる為なら…あの人の為なら…なんだってしてやりたいんです」 「……ッ?」 教室中に響き渡る程に声を張り上げて、廣瀬は変わらずのトーンで再び口火を切る。 でもどこか、思い詰めたように言葉を途切れさせながらそれでも平静さを装って。 「…お前ッ」 その物言いに、浮上していく一つの「まさか」。 「成山くんがやってることは、彼らとなにも変わらない」 「…ッ!!!」 鋭いナイフのように抉られる、俺の全てを拒絶するかのような言葉に。 「なんの解決にもならない。なんの助けにもならない。君がやってることは……」 「…ッ」 拳を握り締め、その場で立ち尽くす俺に廣瀬はじっと瞳を向けながら言葉を口にする。 「ただの、自己満足だ……」 「…じ、こまんぞく…」 ハッとして、目を見開いて硬直する。 俺のとった行動は、ただの自己満足…? アイツを助けてるつもりが、俺自身の気持ちを満たす為だけのものだったって言うのか? そんなッ…… そんな簡単な言葉で片付けんなよッ…… 「君の存在は、重荷なんです」 「…ッ!」 「頼みますからもう、これ以上…事を荒立てないで下さい」 そう言ってきびすを返す廣瀬。 その背中を見つめる以外、なにも出来なかった。

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