115 / 155
24.ポップサーカス 【7】
「ッ…!!!」
苛立ちは頂点に達する、今一番会いたくなかった自分自身を見つけてしまったが為に。
ボーっと突っ立ってんじゃねえ!!!なにも出来ねえくせにっ!なにもっ…!
「おい」
「──ッ?!」
窓目掛けて、容赦なく椅子をブン投げようとしたまさにその時。
「ッ……あ」
ふいに後ろのほうから掛けられた声にハッとする。
椅子を持ったままの状態でそっと振り向いて見れば、そこに立っていたのは見覚えのある顔で。
「……ッ響ちゃん…」
戸の側でこっちを見ていたのは、間違えるはずもなく響ちゃんで。
カッと昇りつめていた衝動が、一気に冷めていくのを感じる。
「そこらへんでやめとけよ。後々面倒になるだけだ」
「っ……」
相変わらずテンション低めで冷静なその言葉に、掲げていた椅子を黙ってその場に置く。
いつから居たんだろな、響ちゃん。
あんなとこ見られたのは、相当恥ずかしいよな俺。
我を忘れていただけに漸く冷えてきた頭でついさっきまでのことを思い出してみると、穴がないなら今から作って入りたい位に猛烈に大恥。普段の俺のキャラからじゃ有り得ねえもんこんな事。
もう、あの頃の暴れるしかなかった自分からは卒業したはずなんだけどな。
「ははっ!いやあまっさか響ちゃんに見られてたとはね─!俺すっげえ恥ずかしいじゃん!!」
無表情を決め込む響ちゃんに、パッと表情をいつも通りに明るくして散々荒らした机や椅子をガタガタ言わせながら元の位置に戻していく。
内心はドロドロ渦巻いていたけれど、そんな部分を響ちゃんにも他の誰にも見せたくなくて。
だって恥ずかしいじゃん?ちょうかっこわりいし。
「はっ、なにかっこつけてんだよ」
そう思ったからこそ、自粛して鼻歌なんてかましながら傍から見たら機嫌良く席をきちんと戻していく。
そんな時に、耳に入ってきた言葉は余りにもハッキリしたもので。
聞き間違えようがねえよ、声を聞いたその直後にピタリと止まる俺の身体。
「なに気取りだよお前。一人でかっこいいつもりか?それともなに、悲劇のヒロインにでもなったつもりかよ」
「……ッなあ、なに言ってんの…」
俺に向けて放たれた言葉の槍は、情け容赦なく身体を貫いていく。
バカにするようなその口調に、未だに腹の中じゃドス黒い感情で渦巻いていた俺には、サラッと軽く流そうとする余裕なんてもちろん無くて。
一度は取り戻したはずの自我が、また脆くも崩れ去っていくのを感じる。
「ムカつくんだよテメエみてえなのはよー…ヘラヘラヘラヘラしやがって…」
真っ正面から向き合って、その言葉にこめかみをピクリと反応させる。
こんな怒りに満ちた表情で対峙するのは、随分久し振りのような気がする。
…なんだよッ、今更俺に対しての日頃のうさ晴らし?
なにもこんな時に……
ともだちにシェアしよう!