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25.ポップサーカス 【7】
「可哀想だとでも言ってもらいてえのか?いつでも明るく振る舞ってて偉いねとでも褒めてもらいてえのかよ」
「──テメエッッ!!!」
刺すようなその言葉に、逃げ場も見えない位に追い詰められて。
気付いたら、冷めた表情を浮かべて立ち尽くしていた響ちゃんへと迷わず突進していた。
「ブッ殺されてえのか…!」
勢い良く胸ぐらを掴んで間近で睨み付け、大抵の奴らならここでもう殆どが怯む。
「……懐かしくねえ?」
「あァ?!」
だけど、響ちゃんは全く動じることもなく真っ直ぐに見つめ返してきて。
ポツリ、唇から漏れた言葉になんのことか分からず気が高ぶっていた為荒々しい口調で以て眉を寄せる。
「いつも、突っかかってくのは俺のほうだったけど」
「……ッ?」
そんな俺に構わず、どこか遠くへと視線を向けながらボソボソと呟いて。
注意して聞き取っていく内に、込められていた手への力が次第に抜けていくのが分かる。
「……あの頃から、俺らの関係ってなにも変わってねえのか?」
「…」
「…一人で、勝手に走ってんじゃねえ」
「…響ちゃんッ…」
射抜かれそうな程に、力を持つその瞳。
初めて聞いた響ちゃんの素直な気持ちに、今度こそそれはもう腹の中まで浸食していた黒い感情が消し飛んでいく。
「…そういえば、よくケンカしたよなあッ…」
あの頃、まだ出会ってから間もない頃。俺は一番手を焼く時期で、好き勝手し放題の暴れ放題だった。
そんなもんだから、響ちゃんとはもちろんソリが合うはずもなく、会えばいつも掴み合いにまで発展してて。
「俺……ひでえこといっぱい言ったね…響ちゃんに」
「別に」
けしかけてたのはいつも俺のほう。
その度に、いつも慶史が間に入ってきてさ。
今でこそこうやって落ち着いてるものの、あの頃は手のつけようがない程ひでえ野郎で。
今じゃなにもなかったかのように響ちゃんにちょっかいかけて、うぜえとか言われるけど拒否しないその姿が嬉しくて。
でも、心のどっかではすげえ嫌がってんじゃないかって、思う時もそりゃあった。
けど、そんな奴じゃねえなんて、大して知りもしないくせに根拠のない答えを導いて納得してみせて…
「俺さ……頭わりいからさ、…どうすりゃいいか分かんなくて……」
「……」
最悪な自分をブッ飛ばしたい。
俺なんかが思う以上に、存在認めてくれてた奴が居て。
一瞬でも、そんな響ちゃんの優しい気持ち疑ったりしてごめん。
自分独りで考えて悩んで、どうにかしたいなんて思ってた俺ってやっぱすげーバカ。
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