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26.ポップサーカス 【7】

「なあッ……どうすりゃいい…っ?俺じゃ、邪魔にしかならねえみてえで……」 黙ったまま側に居続ける響ちゃんに、不器用だけど持ってるその優しさは本物で。 マジ、激し過ぎるよ響ちゃんっ…一歩間違えたら勘違いで乱闘流血ものだよッ…。 「…ッ」 震える声、油断したら溢れてしまいそうななにかを押し殺しながら、じっと足下を眺め続ける。 「……っ!?」 沈黙、なんか気まずくなっちゃったな…なんて思いながらこれからどうすりゃいいのかとじっと立ち尽くしていた俺に。 「…な、ひ…響ちゃん…っ?」 ふわりと頭へと降ろされた、温かい感触。 控え目に髪を滑るその掌に、俺は心底驚いてガバッと顔を上げていた。 「……ッ見てんじゃねえよ…っ」 今度は響ちゃんが視線を逸らす、仄かに頬を染めながらもこの行動以外になにも思い浮かばなかったらしい。 「……っさし過ぎるって…」 「…?」 だから、優し過ぎるって…… 「…っひびきちゃあんッ…」 今の俺にはやばいって…折角さあ、すんでのとこで男らしく耐えてたっつうのに。 思いがけないその行動が、すげえ嬉しくて身に染みて… 思いがけず、滴が頬を伝い落ちる。 「俺ッ……、す、げえ…嬉しいッ…」 「…」 溢れた涙は止まることを知らない。 情けねえなあ、俺って意外と泣き虫なんじゃん? かっこわりい──… 「ははっ…ごめ、ッ俺マジっ…かっこわりいっ…止まんねえっ…」 ギュッと掴んでしまった響ちゃんの制服から手を離しながら、バカみたいにボロボロ流れる涙を笑って必死にごまかそうとする。 「…5分」 「…へ?」 そしたら今度は5分? 響ちゃん、色々飛ばし過ぎ。なにが5分かわかんねえ。

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