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32.ポップサーカス 【7】

「…ハッ、…と、きっ…ちょ、待てって」 「待てると思うか?」 一世一代の大勝負はなんとか無事に幕を降り、後は神頼みへと洒落込むだけで。 色んな奴の力を借りてやり遂げたあの瞬間、一人一人にチューしてまわりたい位にマジで幸せ感じた。 だってあんなこと、初めてだったんだぜ? 「なッ…お、ちつけって…ん!」 「これでもだいぶ、落ち着いたほうだけど」 とまあ、後は結果を待つだけとなった今。 皆に感謝の気持ちを込めて色々と熱い抱擁なんてのをかましてやろうと胸に誓っていた俺だったんだけど、見事に予定が狂った。 「…あの時、俺がどんな気持ちでいたか分かるか?」 「……ッ?」 全てが終わり、舞台袖へとふけてから強く腕を掴まれて、そんなもんだから一歩もそこから動けなかった。 ざわめきを取り戻したフロアからは、椅子を引きずる音や教室へと戻る足音で溢れ出して。 「抑えるのに、苦労した」 「…批土岐?」 完全に人気が無くなるまで、何故か幕の中へと連れ込まれて息を潜めるハメになって。 もちろん生徒会の子が批土岐を探し歩いて何度か側を通って行ったけど、暗さも手伝ってかバレることはなかった。 や、バレたらやべえよ。どう説明しろっての。なあ? 「演説してた、あの時」 「ああ……アレな…」 そういった経緯があって、今に至るわけで。 俺の言葉には一言も耳を貸さず、ぐいぐいと手をひかれてしまいにゃ押し倒された先は、……倉庫。 立ち並ぶ跳び箱の陰に寝かされていたマットの上で何故か組み敷かれ、何も言わずにイキナリ襲いかかってきやがった批土岐にとりあえず落ち着けと抵抗していた。 その最中に、唇から紡ぎ出された言葉にお互い動きを止めて。 「それに…これ」 「ん…?」 口元を滑る指先、そこから頬をなぞって髪へと移動していく批土岐の手。 「あ、やめとけって!マジ即席だからやべえんだって特に髪が!手ぇ汚くなっぞ!」 気付いた時には批土岐の手首を掴んで、それ以上いけないようにと力を込める。 髪とかぶっちゃけスプレーしただけなんだよ。マットに触れたとこから落ち始めてんじゃねえかな……見んの怖ぇ──…どうなる俺の頭。

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