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1.ポップサーカス 【8】
カメラを前にして、シャッターがきられるその寸前の出来事。
「…ッ京灯」
「へっへ~、してやったり~みたいな?」
すぐ隣に居た批土岐の顎をグイッと掴み引き寄せ、キスしてやった。
俺だってなぁ、たまにはこう予測不可能なことして驚かしてやりてえっていうか。
だってさ、毎回俺ばっか振り回されんのは不公平じゃん?
そう思っての不意打ちチュウ、狙い通りに驚いた表情を浮かべる批土岐を笑顔で見つめながら気分は小悪魔ってかァ。
『次はアップで撮るよ~!3、2…』
暫しの間、言葉も出せない位に驚いていたらしい批土岐を内心可愛いなあなんて思いながら眺めて、そうしている内に機械から次へのお呼び出しが掛かる。
「ホラ批土岐、前見ねぇと前」
俺を見つめ続けていた批土岐の肩をポンと叩いて、前を向くよう促す。
「ひとッ、んっ…!!?」
そしてシャッターがおろされる直前、批土岐が漸く行動を起こしたかと思えば……
「んッ、ふぁっ…は!」
ガッチリと顎を掴み引き寄せられ、当然思考なんて追い付ける暇もなく俺の口は塞がれていた。
開かされた口内へと躊躇いもなく入ってきた批土岐の舌が、俺のと絡み合ってピチャりと唾液の混ざり合う音が唇から漏れ出していく。
「ふっ、は…ぁっ」
余りにも深く激しいキスに、身体が後ろへ倒れ込んでしまいそうになるのを必死に堪えながら、批土岐にされるがまま状態となってしまっている俺は従順に受け入れることしか出来ない。
『次はポーズを決めてね!3、2…』
オイオイオイッ、どうなっちゃってんだよコレはよォッ…!!
批土岐を翻弄してやったぜ!!なんて自己満足な余韻に浸れたのは僅か数十秒、今じゃさっきの倍の倍位の勢いで振り回されてしまっている俺がいて、正直もうどうしたらいいか分かんねえ。
俺らが今どんな事になっているかなんて知るはずもないこの機械は、次へ次へとシャッターをきっていく。
「ハッ、はあっ…バ、カ…ヤロォッ…お前、いきなりなにすっ…」
お前コレ、後から選ばなきゃなんねんだぞ。
殆どがベロチューじゃ、選びようがねえよそんなにいらねえよ。
「それはこっちの台詞、だろ?」
「なッ!ちょっと軽く触れただけじゃねえかよさっきのなんて!」
散々貪られた挙げ句、やっと解放された頃にはもう息も限界に達していて、荒い呼吸を繰り返しながら涙の浮かんだ瞳で批土岐をキッと睨み付けていた。
なんだよチクショオッ…!
折角さぁ、不意打ちチュウですっげぇ上手くいったなんて喜んでたっつうのにさぁっ…、あんなんされたらさっきのイタズラなんて軽く霞むぜ…ッ
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