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2.ポップサーカス 【8】
「まさかあんな事されるとは思ってなかったしね。驚いたよ」
「だろォッ?!ハハッ!………ッじゃねえ!!」
腰が抜けちまいそうになる位に激しいキスをお見舞いされてヘロヘロになりつつも、批土岐を動揺させる事が出来た事実にウッカリ全てを忘れそうになった。危ねえ。
ノリツッコミが冴え渡る今日この時、批土岐と面と向かい合いながら最早プリクラ完全無視。
「ちょッ…待てって」
賑やかな店内、あちらこちらから活気づく声で溢れ返るこの空間。
薄い一枚のビニールの向こうでは、沢山の人が行き交っている。
そういう所なんだぞ、分かってんのかッ…!?
「誘ってきたのは、京灯のほうだろ?」
「違ッ…、別に俺っ…そんなつもりでやったんじゃ…っ」
グッと腰に腕をまわされては逃げられない。
キス出来る位の至近距離で、途端に妖しい雰囲気になってしまったこの状況をどうにかして欲しい。
んだよォッ、ちょっとした可愛いイタズラじゃねえかよっ!
なんでこんな展開になっちゃうんだよオイ!!
「つもりじゃなかったとしても、もう…遅い」
「オイッ!ここ何処だか分かってんのかお前っ…!」
なんとか事を落ち着かせようとするも、なにを言ったところで聞く耳を持ってくれない批土岐に嘆くしかない俺。
あのチュウは翻弄させる以前に、引き金になっちゃったってことかよコノヤロォッ。
でも、でも俺は後悔なんてしねえぞ!!
あのいつでも冷静な批土岐をちょっとでも動揺させたのはこの俺だぜイェ─ッ!!
「そんな事言ってるけど、…ココ」
「ァッ…」
ごめん速攻で後悔してえ。
「なに?京灯、キスだけで?」
「んッ、る…せぇっ」
スッと制服の上から自身に触れられて、すでに元気になってきていたことに気付かれてしまった羞恥にカッと頬に朱が走る。
バカ俺っ、なにやってんだよォッ…これじゃますます批土岐の思うツボってやつじゃんかっ…
「ハッ、や…さ、わ…なッ…」
「オカシイな。もっと触って、て言ってるようにしか聞こえないけど」
自身へと、生地の上から触ってくる批土岐の指に反応してしまう自分が心底情けない。
批土岐の胸を押して、なんとか離れようとしても結局は無駄な努力に終わってしまう。
「ッなこと…ねぇッ…ぁっ」
有線や、様々なゲーム機から発せられる音のお陰でちょっとやばい声を出してもまずバレないことはかなりの勢いで救い。
顔を俯かせても、耳元で囁かれる言葉にゾクゾクとしてしまって批土岐の行動を把握出来ない分、逆効果。
「ひ、ときっ…マジ、やめろって…」
「やめていいんだ?」
「ァッ…!」
視線を再び批土岐と合わして、依然として自身を揉みしだいてくるその刺激に身体の奥が疼いてきそうになるのを必死に抑え込みながら説得を試みる。
だけど、形だけの抵抗と言われても仕方がない位に弱々しいものにしかならなくて、俺はもう一体どうすりゃいいのかッ…!!
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