132 / 155

5.ポップサーカス 【8】

「ふぁっ…ん、はっ」 微かに聞こえる店内の賑やかさを耳に入れながら、一秒も耐えられなくなってしまっていた俺は、トイレの個室にて批土岐からのキスを従順に受け入れていた。 あぁ俺、いつからこんなエロい野郎になっちまったんだろ…ッ 「ハッ、ぁっ…」 さっきとは打って変わった優しい口付け、熱を含んだ吐息がまた俺から理性を引き剥がしていく。 唇を舐め上げられただけで思考が痺れていって何も考えられなくなる。 「ひ、ときっ…も、いっ…そ、こ…は」 背に感じるのは壁の感触、批土岐の首に両腕をまわしてキスをしていたけれどそれだけじゃもう俺耐えられなくて。 「どうしたらいい?」 「そ、れはっ…」 唇にばかり落とされる愛撫に焦れったくなってきて、顔を背けながら批土岐に不満の声を上げてみるも、問い返されると言葉を詰まらせてしまう。 つうか、分かんだろォッ…? 俺がしてもらいたいこと位、普通に分かってるくせにコノヤロォッ… 「京灯?」 「ッんだよォ…っも、やだって言ってんじゃんっ…」 息がかかる位に間近で名前を呼ばれ、チラッと視線を合わせるもののすぐに逸らしてしまう。 どうせ俺は…お前みたく余裕なんかねえよっ… 「…知ってる。ココ、だろ?」 「はっ…」 いっつもいっつもいっつも、先に根を上げるのは決まって俺のほう。 もう知るかよ、知らねえよっ…俺はどうせお前にヤられる側なんだからっ…別に我慢出来なくなったっていーだろっ…! 掛けられる言葉と共にするりと落とされた手が、俺自身にまた制服の上から触れてくる。 それだけでなんかもうたまんなくて、耐えられない声が熱を持って唇から滑り落ちてくる。 「シテほしい?」 「ァッ…ひ、と…」 囁かれる声にとろけちまいそうになる。 自然と少し上目遣いになってしまいながら、濡れた瞳で批土岐に視線を送る。 んなこと、聞かなくたって分かってんじゃねえかよっ… 「こんな時位は、……俺の言いたいこと、分かる?」 「ッ…ん」 生地越しに掠めるような愛撫をされて、それだけじゃもうとっくに満足出来ない俺がいる。 穏やかな瞳によって見つめられながら、謎かけでもするような言葉に疑問を抱きたいところだけど、今の俺には容易く理解出来てしまう。 こんな時だからこそ、俺としてはクソ恥ずかしくて嫌なんだけど。 しかも、言われてやるなんて余計にな!! 待っとけよ!自然な流れに身を任せときゃポロッと言っちゃうかもしんねえのに!!! 「京灯?」 「ぅあっ、ちょ…待、て…ぁ!」 高まる気分は、全てを性感帯へと変えていく。 自身へと触れられながら、耳から首筋へと唇を滑らされて、別に弱いわけでもないのにゾクゾクとした疼きが背筋を駆け回っていく。 「分からなかった?」 「んっ…!」 張り詰めてきているのが自分でよく分かる。 もう溢れ始めてるかもしんねえっ…そんなんはぜってえ嫌だっ…

ともだちにシェアしよう!