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2.ポップサーカス 【9】

「そんなに嫌だった?」 「……ッ」 敷地内へと入り、グラウンドを横目にアスファルトの道を進み、徐々に近付いてくる昇降口。 囁く様にそっと唇を操れば、未だ顔を上げようとはせずだんまりを決め込む京灯。 「…ッんな事別に言ってねえだろ」 覗き込む様に顔を近づけてみれば、ボソボソと言われた一つ一つを逃さず聞き取って。 照れつつも根の素直さ故に、最後には折れてしまうそういうところも、俺の意識を捕らえて離さない。 「ああチクショウ!! なんで俺がこんななあ!!」 かと思えば立ち直りの早い京灯、いつも通りになったかと思えば顔を上げ、再び押し迫ってくる。 「朝っぱらから恥じらってなきゃなんね…ッ! …っ?!」 「…?」 しっかりと合わせられていた視線が外され、ふいに宙へと向けられたその瞳。 すぐにもまた戻るはずだったその眼は、何かを捉えたのかサッと表情さえも彩りを変えて。 「批土岐…ッ!!!」 呼ばれたが早いか、突然に身体を引き寄せられ一体何事かと思う。 実際には思考を巡らせている隙も無く、余りにも唐突に抱き寄せられたかと思えば、そのまま位置を逆転させられて。 ───ドッッ 「ぅ…ッ!」 直後に聞こえてきた鈍い音と、耳元で微かに洩らされた苦しそうな声。 「………、京灯…?」 流れる様に速度をもって展開された、一連の出来事。 状況を把握しようとする冷静な思考、途端に力を無くし身を預けてきた京灯。 崩れ落ちそうになる身体を抱き止めて、今この瞬間に何が起こったのかと手掛かりを求め、視線が彷徨い歩く。

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