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14.ポップサーカス 【9】

「……ん…」 過ぎていく風が、心地良く頬を撫でていく。 それを機に、次第に薄れていた意識にまた鮮明さが戻っていって。 「おい…ッ!」 うっすらと開いた瞳、視界がぼやけていた中で聞こえた気がした声、それは覚えのあるものだった。 「……き、みは…」 暫し彷徨わせた視線の末、映り込んだ姿に焦点を合わせ、少しずつ露わになっていく形。 「……ずっと、いてくれたのか…」 心配そうな顔をして見つめていた人物、そこに居てくれたのは京灯だった。 それに気付いてから、意識を失うまでの流れを一つずつ、ゆっくりと思い出していきながら身を起こして。 「…っ、…そうか」 鈍い痛みが駆けたところで、こうなるまでの過程をしっかりと総て整理し終えて。 強く頭を打った様な気がしたが、記憶を失う事にはならず、まずそこに安堵する。 自分が誰かは勿論、すぐ側で不安げな瞳を向けている彼が誰でどういう存在なのか、すんなりと頭に浮かばせる事が出来た。 「…死んだかと思った…ッ」 「…大袈裟だな」 そして何を言うのかと思えば、本人は至って真剣なんだろうけど、クスッと笑ってしまいそうになる言葉で。 あの程度で死んでなんていられないよ、穏やかに微笑みながら視線を合わす。 「…だって、お前全然動かねえし…俺、何回も呼んだのに…ッ!」 「……」 今にも泣き出しそうに、揺れる瞳は本当に俺の身を心配してくれていて。 「怪我、してない?」 「するわけねえだろ!! 大体お前が…ッ!!」 記憶はまだ戻ってはいないようだけど、随分と棘が先程よりも少なくなった様に感じて。 俺への警戒心が、和らいだ印象を受けた。

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