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17.ポップサーカス 【9】
「どうなんだよ…ッ、なあ…」
「俺は、居なくならないつもりだけど」
ああする事でしか、自分を守れない位に傷付いていた。
今ここに居る京灯は、その当時そのもの。
どちらもある意味で本当の姿で、現在の京灯へと繋がれるに欠かせない人格。
「とりあえず、行こうか」
「………」
改めて保健室へ、今後の適切な指示を仰いだ方が良いと思い、京灯にそっと声を掛ける。
拒まれるかと思ったけれど、微かに頷いた京灯はゆっくりと立ち上がり、俺もその後へと続く。
「何処か、痛むところは?」
「…ねえよ。お前こそ…」
「ないよ」
廊下へと出て進みながら問い掛ければ、躊躇いがちながらも素直な言葉を聞いて。
「……そうかよ」
俯き加減にボソりと呟いて、かと思えば押し黙ってしまう。
「………」
暫しの時を、静寂が支配して。
「…批土岐」
「ん?」
立ち止まった事に合わせて足を止め、遠慮がちに向けてきた瞳と視線を交わす。
「色々、…ありがとな」
「……っ」
照れくさいのか、少し頬を赤らめての一言だった。
「成山アァァッ!!! いやがったなテメエコラァッ!!!」
「……?!」
見せられた素直さに、込み上げてくる衝動を一体どうしたらいいのかと思案していた時、突如として事は最終局面を迎える。
「オルアァッ!!!」
「で…ッ!!!」
「京灯…っ?!」
物凄い勢いで誰かが迫ってきたかと思えば、そのまま何をする隙もなく、京灯の後頭部へと綺麗に決まる物体。
ぐらりと前へと傾いていく身体を視界に入れている事しか出来ず、突然の展開に若干頭が混乱している。
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