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6.絡めとられる

「……?」  気がつけば見知らぬ森の景色に覆われていて、アルマは一瞬混乱した。だが、辺りに漂う甘い香りに、香りの元を探していたのだったと思い出す。香りは先程よりも強くなっているようで、一抹の不安を覚えた。 「……引き返そう。」  とにかくこの場所から離れたくなり、一歩後ろへと退く。その瞬間だった。 「――ッ!?」  急に何かに身体を拘束されたと思うと、アルマは宙に浮かび上がった。いや、持ち上げられたのだと気づく。 「なっ……!?」  太い蔦の様なものが身体に絡まっている。蔦の元が何処にあるかは確認できなかったが、しっかり身体を捕らえた蔦は、どこかへとアルマを連れて行く。アルマは焦った。 「やめっ……放せ!」  叫んでもがくが、蔦は一向にアルマを放そうとはしない。 「放せ! 放せって!」  そう叫んでいると、蔦の拘束が一気に解かれる。 「うわっ!?」  痛みを予期して思わず目をギュッと閉じた。痛みを伴って、地面へと転がり落ちる……はずだった。 「ん……?」  予想外に早く転がり落ちた所は地面にしてはやけに弾力があり、やけにぬめりを感じる。恐る恐る目を開けると、アルマは言葉を失った。 「――ッ!」  視覚的にグロテスクな触手が、そこかしこにあるのが見える。アルマの下にも、周りにも、頭上にも。そして、一層濃い甘い香りが漂っているのに気がついて戦慄する。自分は餌として投げ込まれたのだと思い、慌てて逃げ出そうとした。だが、手足を再び蔦状の太い触手に拘束され、ぬめりとした触手のうねる下へと押さえつけられる。 「くそっ……!」  背後でぬるぬると蠢く触手は、生理的嫌悪感をアルマに与える。アルマは必死にもがこうとするが、押さえつける力が強くて叶わない。蔦状の触手から逃げようとしていると、蠢いているぬめぬめした触手がアルマの身体を這う。 「やめろっ!」  気持ち悪くて思わず叫ぶが、触手はお構いなしにアルマの身体を這っていき、ついには着ている服の中に入り込む。冷たくぬめる感触にアルマは声をあげる。 「やっ、やめっ……!」  触手は服の中を這い、胸の尖りを掠めた。 「っ……!」  微かに感じた感覚にアルマは息を呑むが、触手は構うことなく服の中を這う。 「やめろっ……ぐっ!?」  尚も叫ぶ口には別の触手が突っ込まれる。アルマは舌で触手を追い出そうとするが、甘ったるい変な味がして怯んでしまう。そして、その瞬間に喉奥へと、甘ったるい液が触手から噴き出た。 「――っ!?」  吐き出そうとするも間に合わず、その液体をほぼ飲んでしまう。更に別の触手から、透明な粘液がアルマの身体に噴きかけられた。粘液がかかった衣服は、見る見るうちにボロボロになって、アルマの身体から剝がれていく。 「うぅぅッ!?」  身体が溶かされると思い、口に触手を突っ込まれているのも忘れて叫び声をあげる。だが、粘液が皮膚に付着しても痛みは感じない。口から触手も出ていき、解放されるのかと疑問に思うが、すぐに思考回路は混乱に陥る。 「あ……あっ……」  初めてルイスに吸血された夜と同じ様に、身体が熱くなっていく。一瞬、死ぬ毒を飲まされたという考えが過ったが、身体を這いまわる触手が胸の尖りを再び掠めた時に、その考えは霧散する。 「ひゃうっ……!?」  最近教え込まれた感覚と、口から漏れた甘い声に戸惑いを隠せない。咄嗟に口を手で押さえようとするも、拘束されたままでは叶うはずもなく、再び触手が胸の尖りを掠め、アルマは喘いだ。 「あっ……やぁっ……」  混乱していると、チューブの様な触手がアルマに見せつけるように目の前でその入口を収縮させる。もう一つ同じような触手が出てきて、同じような動きをする。アルマが混乱したまま見つめていると、二本の触手は、服が剝がれたことで露出した胸の尖りに近づく。 「やっ、やだっ!」  触手の意図が何となく読めてしまい、逃げようと必死に身体を動かすが叶わない。触手は二つの胸の尖りに同時に吸い付いた。 「ああぁぁぁっ!?」  触手は胸の尖りを揉みこむ様に収縮し、更に尖りの先を細い舌の様なもので舐められるような感覚がする。堪らず甘い声が零れ出た。 「ひっ、やあぁっ、ああぁっ、やうぅっ!」  強く感じる快楽に生理的な涙を流す。喘いでいる間にも触手は身体を這い、その感覚からもアルマは徐々に快楽を拾うようになって、更に混乱する。 「いやあぁっ、あうぅっ、うあぁっ、やあぁっ!」  最早口は喘ぐことしかできなくて、嫌々と幼子のように頭を横に振る。快楽で思考回路も溶かされつつあるのに、別の場所からも強い快楽を感じて叫んだ。 「はうぅっ!?」  慌てて下腹部の方を見下ろすと、ぬめる触手が緩く立ち上がったアルマの分身に絡みついて、鈴口付近をなでるように触手の先端が這っている。 「やめっ、ああぁっ、やあぁっ、やだあぁっ!」  喘ぎながらも拒絶の言葉を吐きだすが、当然触手は無視して尿口にまで先端を這わせる。そこからは白い蜜が溢れ、余計に触手の滑りを良くしていた。そして、蜜を欲しいとでもいうように、チューブ状の触手が近づいてくる。それに気がついて、アルマは喘ぎ苦しむ中でも叫んだ。 「ひっ、やだああぁぁっ!」  アルマの叫びも空しく、チューブ状の触手が纏わりついている触手ごとすっぽりと覆う。更に収縮して、アルマ自身を刺激する動きをし始めた。すると、纏わりついていた触手たちも蜜が欲しいと言う様に這いずり回る。それらの動きは、アルマには堪えがたい快楽を呼び起こした。 「やだあああぁぁっ、ああぁぁっ!」  激しい快楽を拒絶しようと、何とか甲高い声で叫ぶが、空しく森に響くだけで、何の助けにもならない。快楽から涙をボロボロと流しながら喘ぐ。 「ああぁぁっ、あっ、あうぅぅっ、んううぅっ!」  度重なる責め苦によりもう限界で、這いずり回る触手が尿口を刺激した途端、アルマは叫んで白い蜜を吐き出した。 「あああああぁぁぁっ!」  その瞬間に、更に頭上の触手から、濃い甘ったるい臭いのする透明な粘液が降り注ぎ、アルマは全身に浴びることになった。その臭いで、頭が更に使い物にならなくなるのを感じる。そして、自分はもう助からないと直感する。  ああ、僕はここで死ぬのか……  思考が重く鈍くなり、触手が身体を持ち上げるのにも反応できない。四肢を固定する触手はアルマの身体を持ち上げて両脚をM字に開かせる。更に触手は、意識がはっきりしていれば羞恥心を煽る格好に、アルマの身体を固定してしまう。意識がはっきりしないアルマは、小さく喘ぎながら触手のなされるままだった。アルマの後孔へと触手が這い、その入口をつつく。後孔は少し解けており、ぬめる触手なら入っていけるに違いなかった。だが、触手は入って行かず、また別のタイプの触手が出てきて、アルマの前でアピールする様にうねる。アルマははっきりしない意識の中で、その触手を見たが、正常な反応を示せるほど思考は働いていなかった。その触手には拳大の卵の様な物が中で連なっていて、それをアルマの中に産み付ける気なのだ。 「たす……うあ……あっ……たすけて……」  働かない思考の中で小さく助けを求める。それは空しく響くばかりで、誰にも届かないもの……そのはずだった。 「ボクのものに手を出したね……!」  怒声と共に空を切る鋼の様な音が聞こえ、拘束が解かれて地面へと吸い寄せられる。地面に叩きつけられる前に、誰かに受け止められた。アルマは朦朧とした意識の中で、その人物を見る。 「ルイ……ス……さ……」 「……。」  ルイスはアルマにちらりと金色に光る視線を寄越して、他所に視線を移すと何やら呟き始める。 「契約に応じ、我に仇なすものを薙ぎ払え!」  アルマには辺りの様子を知る余裕もなく、轟音が響くのを聞いたところで意識は途切れた。

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