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28.決断
アルマは何とか自分の部屋に戻ると、顔を真っ赤にして床にヘタッと座り込んだ。
「好きって……キス……」
断片的な言葉を出して、それだけで、顔が熱い。心臓は、ドキドキと早く脈を打っていて、治まりそうにない。
「怖かったのに……でも……」
ルイスの事は、怖かったはずだった。何を考えているのか解らなくて、悪戯に心をかき回していく存在だと思っていたのに――今は、ルイスとの心が近い気がしている。
「ルイスさん……」
名前を呼ぶだけで、心臓の鼓動が早くなる。
『君のことが……好きなんだ。』
「っ……!」
ルイスの声が思い出されて、アルマは更に顔を赤くする。顔から湯気でも出ていそうなくらいに、顔が熱い。治まらない鼓動と火照りをどうにかしたくて、言い訳するように呟く。
「しゃ、シャワー……浴びよ……」
ふらふらと立ち上がって、部屋を出た。なんとか脱衣所に辿り着くと、服を脱いで風呂場に入る。温かいシャワーを浴び、身体の汚れが落ちていくのを見ながら、先程自分がルイスに言った言葉を思い出して、また顔を赤くする。
『僕の血……の、飲みますか……?』
思いがけず、飛び出た言葉だった。血を飲めば、ルイスは元気になれると思ったのだ……「その後」のことが抜け落ちていたわけだが。
「……。」
ルイスは「世話だけでは済まない」と言っていた。それが一体何なのか解らないほど、アルマは鈍くもない。多分、あのまま血を吸われていたら……前に血を吸った後でアルマにした、その続きをやってしまうのだろうと、何となく推測できた。
「っ……。」
自分でも触れたことのない場所に触れられていた。思い出すと恥ずかしくておかしくなりそうで、アルマはギュッと目を閉じる。
「……。」
それでも、今では嫌だったとも言えない自分がいるのが分かって、アルマは自分の肩を抱く。はしたない、いやらしい、えっちだ……ルイスに変えられている自分がいて、アルマは苦しい。だって、やっぱり、「こういうこと」は、オトナじゃなきゃ――悪い子だ。イケナイ子だ。
「っ……」
ああ、でも、ルイスには、元気になって欲しい。目は覚ましたけれど、まだ、病気が治っていないかもしれない。そういえば、前に血を吸われてから、4日以上も経過している。「ちょっとの飢えなら我慢できる」とは言っていたものの、やっぱり病気の時は身体によくないとアルマは思う。
「うぅ……」
でも、今まで吸血の後にされてきた事が、怖くて恥ずかしい。自分が自分でなくなってしまう。そんなことを考えてしまうくらい、望まぬ快楽に翻弄されてきた。そして、ルイスの口ぶりからして、今日血を吸われたら、きっと、それ以上のことをされる。それは、とても恥ずかしくて、とても怖い。
「でも……」
アルマは、壁に寄りかかって、ずるりと床に座り込む。シャワーに打たれ、アルマは俯いて目を開けた。その瞳は、未だに迷いで揺れているけれども、それでも、強い光を湛えていた。
やることは、決めた。
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