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第157話

ルシウスside レヴァンの村は何も知らない者が見れば、栄えていると感じるのだろう。その裏には一人の子供が痛めつけられているなんて、気付きもしない。 「じゅ、獣人様!!」 思えば、こうしてこの村にやってくるのは初めてかもしれない。レヴァンを初めにここに迎えにいくつもりだったのに急な仕事が入って行けなかった。 「村長は何処だ。話がある」 「は、はい」 すぐそばにいた村人に声をかけると、すぐに案内をしてくれる。 ひそひそと私達を見ては小声で話す村人達。気分は決して良くない。 「ルシウス様、お話をされましたらすぐに帰りましょう。ここは居心地が悪い」 「ああ、そうしよう。」 フィオナが顔を歪めてそう伝えてくる。頷けば安心したように息を吐いたから、早く話を終わらせて帰ってやらないと。 「獣人様···な、何か、御用でしょうか······」 村長の家にやってきて、椅子に座る。 「私の名前はルシウスだ。聞き覚えがあるだろう。」 「ルシウス···ぁ、レヴァンの······」 「そうだ。今日はレヴァンの事で話があってきた。···以前、レヴァンがこの村に戻ったそうだな。その際に傷を付けられた。」 そう言うと村長はまずいと言ったような表情をして、その後すぐに土下座をした。 「悪い事をしたとは思っている!だが人間は弱いんだ!あ、あの子がいなければ···あの子のような、者がいなければ、毎日の不安に押し潰されてしまうっ!!」 「下らんな。ならばレヴァンが亡くなったあとはどうするつもりだ。そうしてまた犠牲者を出すのか」 「それは···っ」 「レヴァンは両親の墓参りさえ満足に出来ていない。今すぐにレヴァンに対する暴力を止めろ。」 きつく言えば顔を歪ませるだけで、返事をしない。どういうつもりだ。 「···私には村人を説得できん。今度は私がレヴァンのようになる」 「貴様ッ」 その物言いに腹が立ち、立ち上がった。けれどそんな私より早く、そばにいたフィオナが人間を殴りつけた。

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