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第162話
しばらく日が経って、仕事をしていたルシウスが俺を仕事部屋に呼んだ。フィオナさんと二人で一緒に部屋に行くと、そこにはルシウスだけじゃなくて、デニスとエレニがいた。
思わず体が強ばる。
「レヴァン······」
「······ル、シウス、ごめん。準備が出来てなくて、ちょっと待って」
キューっと胸が苦しくなる。部屋を出た俺についてきたフィオナさんが、優しく背中を撫でてくれた。
「一度お部屋に戻られますか?」
「···戻ったら、もう来れなくなる気がして······」
「それはいけませんね。あの二人は正式にルシウス様から招待をされております。」
「フィオナさん」
「はい」
深く息を吐いて、フィオナさんを見上げる。優しい表情で柔らかい目で俺を見る。
「隣に、いて······」
「はい。貴方が安心できるのであれば」
フィオナさんの手を掴んで、また部屋に戻ると、ルシウスが困った顔をして俺を見た。
「レヴァン、おいで」
「······二人と話するんでしょ?ここで、聞くよ」
ルシウスは苦笑を零して、デニスとエレニを俺のそばまで連れてきた。フィオナさんの手を掴む力が強くなってしまう。
「レヴァン、今まで全部、悪かった。」
「本当はレヴァンのせいじゃないって、みんな心のどこかで分かってるんだ。でもそれに縋ってないと、何のせいにすればいいのかわからなくて、全部···背負わせてしまった。」
「謝って許されることじゃない。俺達なんて······お前を沢山傷つけたから······。許してもらおうとは思ってないんだ。ただの自己満足だ。」
二人の言葉に、そりゃあそうだろうと大きく頷きたくなる。
でも、もう今更、全てがどうでもいいんだ。
「もう、どうでもいいことだから、気にしないで。許すとか、そういうのも興味ないんだ。ただ······もう、顔を見たくない。折角謝りに来てくれたのにごめんね。」
フィオナさんは悲しそうな顔をして俺を見ていたけれど、これが今俺が二人にかけることの出来る唯一の言葉。
「そう、だよな。突然来て、悪かった。」
「ううん。······ごめんね。」
フィオナさんの手を引いて部屋を出る。途端どうしようもなく自分が小さな人間に思えて、廊下に座り込み泣く。
「お部屋に参りましょう。持ち上げますよ?」
「······んっ」
フィオナさんに抱っこされて自分の部屋に連れて行かれた。
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